頚部挫傷を例に、初診時の診察の流れを説明します。
受付の段階で、交通事故か一般かまず聞きます。交通事故では交通事故専用の問診票を用意しておきます。
事故日、どのような事故か、警察用診断書は必要かなどが一般の問診標とは異なります。
痛みやしびれの部位を必ず患者さん自身に記入してもらうことが大切です。
痛みの部位を確認し、頚椎の可動域をみます。特に回旋や側屈が痛むと訴えなければ頚椎の最大伸展と最大屈曲角で十分と思われます。
上肢のしびれや巧緻運動障害を訴えなければ、上肢の深部腱反射は不要かと思いますが、何かの時の安全のために行っています。
上肢深部腱反射としては、上腕二頭筋腱反射(C5髄節)、腕橈橈骨筋腱反射(C6髄節)、上腕三頭筋腱反射(C7髄節)、病的反射としてはホフマン反射(反射中枢はC8~T1)、トレムナー反射(反射中枢はC6~T1)、ワルテンベルグ反射(反射中枢はC6~T1)をみています。これらの病的反射は健常人でも出現することがあるので、注意が必要です。
NRSを聞きます。握力計と打腱器はすぐに使えるよう、診察机の上に置いてあります。
事故の状況が複雑なときは、ミニカーで位置関係を説明してもらい、おおよその患者さんの過失割合を考えます。車の種類(軽か普通車かなど)や車の被害程度、身体への衝撃の強さを聴きます。
自宅住所、職業、仕事内容、勤務地、外来に余裕があればさらに過去の事故歴、後遺障害等級の有無を聴いても良いでしょう。
頚椎4方向(正面・側面・最大伸展・最大屈曲)を撮影します。
頚椎伸展や屈曲が十分できているか、骨棘の有無、椎間板腔の狭小の有無、脊柱管狭窄の有無、棘突起骨折などの骨傷がないことを確認します。このとき正常レントゲン画像を見せて比較します。
「20歳のスタントマンが事故にあったのではないから、放っておいたら治るとは言えない」と最近は説明しています。
初診日が受傷日なら、基本的に次回受診日は受傷から2日後(48時間後)を目安にします。
あまり沢山色々なことを説明しても患者さんは覚えられません。一説では3つまでしか覚えられないとのことです。
自宅や職場が遠方の場合は、近くの整形外科に紹介します。健康保険では宛先不明の診療情報提供は算定できませんが、自賠責保険ではそこまで厳密でなくて良いと思います。
前医での警察用診断書がなく、当院でも警察用診断書を希望しない患者さんには理由を尋ねます。損保や警察から診断書はなくても大丈夫ですと言われていることが多いです。そこで、物損事故のデメリットを説明すると、大概の患者さんは希望します。
事故の相手が診断書をだすから、自分はいらないという患者さんもいますが、だす保証はないので警察用診断書を勧めます。たしかに、事故の当事者の誰かが出せば事故証明は人身になります。
物損の事故証明では同乗者の名前は出てきませんので、同乗者は警察用診断書をだして人身事故扱いにしないと、事故証明に本人の名前が載らなくなってしまいます。しかし実際には、物損のままでもそれほどの影響はない印象です。
労災がらみの場合は、物損事故扱いのままだとだめだと労働基準監督署から指摘されたことがあります。実際には物損事故扱いでも労災は使えるようですが、やはり警察用診断書をだしておいたほうが無難です。
NRS3を超えたら消炎鎮痛剤のセレコキシブなどを投与します。NRS3以下では、外用薬のみか、頓服の鎮痛剤を投与します。いずれにしろ「我慢できるから薬はいらない」だと慢性化する危険があります。
受傷直後でも、首回りのストレッチングを指導します。
受傷後48時間超えてから開始します。
任意保険会社から一括連絡が無ければ、全額かあるいは一部預かり金となります。
接骨院での施術はしないようにとのパンフレットを全患者さんに渡しています。