交通事故に警察用診断書は必要?
警察用診断書を提出しないと物損事故扱いになり、被害証明は民法709条により被害者自身がする必要があります。一方人身事故の場合は、自動車損害賠償保障法3条により加害者が無過失を立証する必要があります。
警察用診断書で注意することは?
警察用診断書では治療期間は受傷日からにしてください。初診日からではありません。たとえば事故の3日後に初診となった場合に、初診日から2週間の加療とすると治療期間が17日となり、加害者の行政処分が必要以上に重くなります。
事故日は新聞テレビ等で報道された、あるいは自分が直接目撃していなければ、患者さんから直接聞くしかありません。そこで○月○日交通事故にて受傷(患者申告による)とする必要性はないかなと思います。一般的には患者申告に決まっているし、警察は事故の日時を把握していますので。
では、受傷後3日してから症状が出た場合はどうでしょうか。それでも受傷日からで良いと思います。厳密に、受傷日、症状出現日などを記載するのは煩雑ですし、そもそも警察用診断書は、行政処分をきめるためという要素が強いのです。
なお、後遺障害診断書にも受傷日を記載する欄があります。
「全治」は、病院に通い、治療に要する期間のことであり、似たような言葉である「完治」は、一般的に日常生活に支障がないレベルまで回復する期間のことを指します。
初診時に診断がつかない場合の診断書発行は?
初診時に骨折が疑われるが診断がつかないことがあります。急ぎでなければ、CTやMRI検査後に診断書を発行します。急ぎの場合は、骨折がなければ14日間の加療、もで骨折がみつかりそうなら「精密検査で骨折がみつかれば28日間の加療を要す見込みである」とか「精密検査で骨折がみつかれば、この限りではない」としたらいかがでしょうか。そうすると後日警察からどうでしたかと連絡が来ます。
物損事故扱いでも自賠責保険は使えますか?
自賠責保険は被害者救済を目的としているため、物損事故でも使えます。ただし、この場合は人身事故証明書入手不能理由書を提出する必要があります。安易にこの人身事故証明書入手不能理由書が使用されていることが問題になっています。加害者に対する不公平が生じる制度は、法治国家としてあってはならないと思います。また、警察庁の公表データ(人身事故が減っている)が事実と異なることも是正すべきです。
交通事故は 本当に減っているのか? “20年間で 半減した”成果の真相(花伝社:加藤久道著)
人身事故証明書入手不能理由書について
刑事罰や交通違反の点数がつくことを免れるために、一度物損事故としておいて、保険の請求に関してのみ人身事故証明書入手不能理由書を提出しようとする方がおります。また、物損にすることを条件に相手との交渉を有利にしようとされる方もいます。このような方法は不正ですので症状があれば診断書を提出して人身事故扱いにしてください。
警察用診断書と行政処分の関係は?
加害者の不注意によるものでは、治療期間が15日未満で3点、治療期間が15日以上30日未満で6点になります。なお6点以上で免停です。
交通違反の点数一覧表(警視庁)、交通事故の刑事責任とはどんなものですか?(JAF)
被害者の負傷程度 | 加害者の不注意 | 相手にも非 |
治療期間30日以上 3か月未満 | 9点 | 6点 |
治療期間15日以上 30日未満 | 6点 | 4点 |
治療期間15日未満 | 3点 | 2点 |
建物を壊してしまうと建造物損壊事故の扱いになり、違反点数がつきます。なお、道路または道路上に設置されたガードレール(標識)などは建造物とはみなされません。
念のため受診の警察用診断書は?
自賠責保険では警察用診断書は1通しか認められていません。症状がない旨の診断書を提出後に、何らかの症状がでて診断書を希望されても自費となってしまいます。ですから、よほどのことが無い限り無症状での診断書は出さない方が良いでしょう。
2通目の警察用診断書を希望するのはどんなとき?
前医での骨折の見逃しがあり、かつ加害者の誠意がない場合です。被害者の加害者への処罰感情が高く、たとえ自費でも2通目の警察用診断書を希望されます。
前医での警察用診断書の治療期間が3週間などと長い場合に、警察と加害者が2通目の診断書を希望します。診断書の費用は加害者が払うようです。
会社へだす交通事故関連の診断書代は加害者に請求できる?
会社へ提出する休業診断書代などは、本来交通事故に遇わなければ不要な診断書です。ですが、この費用を加害者側損保に請求しても拒否されることが多いので注意が必要です。
交通事故から日にちが経ってからの警察用診断書はどう書けばよいですか?
交通事故から2週間以上経ってから警察用診断書を求められたときは、当初見込みを書きます。つまり、患者さんが事故直後に来院して診断書を希望したらこう書いたであろうことです。具体的には、交通事故の受傷日と「当初見込みとしては、受傷後約2週間の治療を要する見込みであった」となります。これは当地の警察から勧められた方法です。
診断証明書とは何ですか?
柔道整復師が負傷名と全治見込期間などを証明するものです。厚生省健康政策局医事課によれば診断書に紛らわしい名称を用いて証明書を発行することは許されないとのことです。
★おまけ 診断書と意見書の違いは?
診断書とは純粋に医学的な内容が記載されているものです。一方意見書は、介護保険主治医意見書のように意見を述べるものです。よく患者さんが、休業が必要だという診断書を希望しますが、それは診断書ではなく意見書になります。診断書ではありませんから発行の義務はありません。