変形性膝関節症

症状

初期症状は動作の開始時痛です。たったりしゃがんだりや、歩き初めに痛みがでます。
次第に階段昇降時痛もでて、正座が困難になります。

診断

問診や触診、レントゲン撮影にて診断します。

鑑別診断

半月板損傷や、大腿骨内顆骨壊死、痛風、偽痛風、鵞足炎、関節リウマチなどがあります。

関節液が混濁していて炎症が急性の場合は痛風や偽痛風、炎症が急性でないときは関節リウマチを疑います。関節液中の白血球数が多くなると、関節液は混濁します。

治療方針

食事を含めた日常生活指導と、大腿四頭筋筋力強化を指導します。
内服薬や、湿布などの外用剤で改善しなければヒアルロン酸*やステロイド**の関節内注射をします。
関節液貯留を疑った場合は穿刺します。関節液は通常黄色透明です。
穿刺が困難な例では、エコーガイド下に穿刺をしています。
手術が必要な場合は専門病院を紹介致します。

*ヒアルロン酸 ギリシャ語でガラスを意味するヒュアロスhyalosにウロン酸を表すuronicをつけたもので、目玉のなかの硝子体(ショウシタイ)から得られたウロン酸という意味です。無色透明ゼリー状の物質です。

**ステロイド 当院ではデキサート、リンデロン、ケナコルトを用います。ステロイドは組織の炎症を抑えて除痛効果が非常に高い薬剤ですが、その副作用として、軟骨の変性や骨粗鬆症を引き起こすことがあります。また、痛みが軽減したために、むしろ無理をして関節が壊れてしまうこともありえます。原則として、2週間以上の間隔をあけて注射します。

膝に関するよくある質問

歩いた方が良いですか?

痛みがある程度軽減したら、適量なら歩いた方が良いです。歩くか歩かないか、1か0ではなく0.5や0.6など適量歩いて下さい。目安は心地よい疲れです。
炎症が強く、痛みが強い間は当院で指導した運動を中心に行って下さい。痛みが強いのに無理に歩いても、軟骨をさらに傷めてしまうようです。

ものごとには適量というものがあります。飲み過ぎ、食べ過ぎ、寝過ぎもダメです。知識のありすぎも、傲慢さや自信過剰、落ち着きのなさなどの副作用をもたらします。

膝の痛みを治したくて、いろいろな神社をめぐってさらに悪化した患者さんがいました。精一杯の努力をしてから神頼みをしたほうが効果があるのではないでしょうか。受験に例えれば、勉強しないで志望校に合格しますようにと神頼みをしても効果はどうなのでしょうか。

「一生懸命努力します。どうか見守っていて下さい」が本来の祈り方との考えがあります。もともと祈りとは「意宣(いの)りといい、自分の意思を宣言する行為だそうです。

どうして膝に水がたまるのですか?

膝に炎症が起きているからです。風邪を引いて鼻が出るのと同じようなものです。水の元は血液です。

正常でも関節の水(関節液)はありますが、まず針を刺しても抜けないレベルです。目で言えば、眼球の表面が涙液で潤っていても涙としては出てこないのと同じです。

膝の水は抜かない方が良いのではないですか?

たまっている水は炎症をおこす物質を含んだ異常な関節液です。ある程度の水をほおっておくと膝を伸ばす筋肉が萎縮します。少ない水は安静などで再吸収はされますが、あまり水がたまった状態を放置していてはいけません。

水を抜かない方が良いと考えている膝の専門家はいません。もちろん、毎日は抜きません。

膝の水を抜くからまたたまるのではないですか?

水を抜くからたまるのではなくて、たまるから抜いているだけです。もちろん、ただ水を抜くだけではダメなので生活指導を行います。

鼻をかむから鼻が出るわけではないのと同じだと思います。

いつまで水がたまるのですか?

炎症が取れるまでです。初期に水がたまる人は経過が悪いとの報告がありますので、より注意が必要です。一般的には徐々にたまらなくなりますが、水がたまらないから治ったわけではありません。

仕事で安静が保てない方や、せっかちで動きが機敏な方は水がたまりやすいようです。

膝の注射は痛いですか?

痛くないと言えばウソになります。注射で痛むのは一時ですが、注射をしないと痛みがずっと続く可能性があります。当院では特殊例を除いて細めの針を使用しております。

通常のヒアルロン酸の注入 23G(ブルー針)、6mlを越える関節液の穿刺 21G(グリーン針)、大量の関節液 18G(ピンク針)

Gはゲージを意味します。ゲージは産業革命時代のイギリスの金属線の太さを示すもので、ワイヤー製造に使用する19世紀初頭に開発されたものです。数字が小さい方が太くなります。ちなみに、18Gで外径1.2mm、21Gで外径0.8mm、23Gで0.6mmです。当院の針で一番細いのは30Gで外径は約0.3mmです。

注射をした日に入浴して良いですか?

よくある質問にもありますが、問題ありません。

軟骨は再生しますか?

残念ながらあまり期待できません。軟骨が再生しなくても、筋力をつけていくことにより炎症が治まります。また、痛みも軽減します。

グルコサミンは効きますか?

よくある質問にもありますが、効きません。日本整形外科学会のサイトへ

膝の体操はどれくらいの回数すれば良いですか?

大事なのは回数ではありません。回数はあくまでも目安です。

腕立て伏せを100回するように言われると、回数ばかり気になって1回1回がおろそかになります。量よりも質が大切なのです。

膝の痛みだけ取りたいのですが?

お勧めできません。身体からの注意信号として痛みがでているのです。痛みを感じないと、シャルコー関節(神経障害性関節症、糖尿病や梅毒など)のように急速に関節が破壊されてしまいます。

お尻の知覚が無い方が、便座で低温やけどをすることがあるように痛みの感覚が大切です。
消炎鎮痛剤だけ内服して、膝の痛みを我慢して無理をしていると早く軟骨がすり減ります。

いつ治りますか?

よくある質問にもありますが、体重、職業、筋力、生活習慣など個人差がありますので予測は困難です。ただ何の対策もとらないと悪化することは間違いありません。

いつ英語が話せるようになりますか、いつピアノが弾けるようになりますか、いつ結婚できますか、どれも難しい質問です。中学3年生に、今度の3月に卒業するでしょうと予測するのとは違うのです。

参考

生姜 Ginger

生姜のジンゲロールという成分が炎症を抑えるようです。目安は1日60g、生姜の固まり1個分です。

大豆 Soy

大豆イソフラボンには抗酸化作用があり、血流などを促す効果が期待できます。また、筋委縮を抑える働きがあるという。

アボカド Avocado

アボカドには「アボカド不けん化物」という成分が多く含まれています。犬の実験ですが、この成分がTGF-βの産生を亢進させ、軟骨がすり減るのを防ぎ、さらに傷ついた軟骨の修復を助ける働きがあるという研究報告があります。
ポーランドの報告では86%に効果がみられたとの報告もあるようです。

医療法人桐の葉会 深沢整形外科
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