子供が夜になると「足が痛い」と訴えることがあります。ところが翌朝には何事もなかったように元気に走り回っています。
このような症状は一般に「成長痛」と呼ばれています。
成長痛という名前から、骨が伸びるために痛むと思われがちですが、実際にはそうではありません。
また、運動のしすぎが原因という説や、弟や妹が生まれて親の愛情が不足すると痛みを訴えるという説もあります。
では、現在の医学ではどのように考えられているのでしょうか。
成長痛とは?
成長痛は、主に3〜12歳頃の子供にみられる、繰り返す下肢の痛みです。
典型的には、次のような特徴があります。
- 夕方から夜間に痛みが出る
- 両側のふくらはぎ、太もも、膝の周囲などが痛む
- 翌朝には痛みがなくなっている
- 日中は普通に歩いたり走ったりできる
- 診察しても腫れや熱感、関節可動域制限などの異常がない
毎晩痛むとは限らず、痛みがない日が何日も続くこともあります。
成長痛は骨が伸びるために起こるのか?
骨が成長するために痛みが起こるという科学的根拠はありません。
そもそも、成長痛が多い幼児期から学童期前半は、思春期のように急激に身長が伸びる時期とは必ずしも一致しません。
2022年に医学雑誌『Pediatrics』に掲載された研究では、145件の研究を調査した結果、成長痛の定義や診断基準が研究によって大きく異なることが分かりました。
また、成長と痛みの関係を明確に示す証拠も乏しいことが指摘されています。
つまり「成長痛」という名前は、必ずしも原因を正しく表していないのです。
運動のしすぎが原因なのか?
成長痛の子供では、活発に運動した日の夕方や夜に痛みが出ることがあります。
2026年に発表された37研究、16,086人を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析でも、身体活動や関節の過可動性と成長痛との関連が報告されています。
ただし、関連があることと、運動のしすぎが直接の原因であることは同じではありません。
オスグッド病などの一般的なオーバーユース障害では、運動中や運動後に特定の部位が痛み、押すと痛む場所が明確なことが多くあります。
一方、典型的な成長痛では、日中の運動に支障がなく、翌朝には痛みが消失します。
したがって、成長痛を単純に運動のしすぎによる障害と考えることはできません。
弟や妹が生まれると成長痛になる? 愛情不足が原因?
昔から、弟や妹が生まれると上の子が足の痛みを訴えるようになる、という話があります。
弟妹が生まれると、上の子の生活環境は変化します。親と過ごす時間が減ったり、寂しさや不安を感じたりすることもあるでしょう。
心理的なストレスが痛みの感じ方に影響する可能性はあります。
しかし、弟妹の誕生や親の愛情不足が成長痛を引き起こすという科学的根拠は確立していません。
子供が痛みを訴えるからといって、親の愛情が不足していると考える必要はありません。
また、心理的な要因が関係していたとしても、子供が痛みを作り出しているわけではありません。本人にとっては実際の痛みです。
最近の研究では何が分かっているのか?
成長痛の原因として、現在までにさまざまな仮説が提唱されています。
| 考えられている要因 | 現在の評価 |
|---|---|
| 骨の成長 | 原因とする根拠は乏しい |
| 運動負荷 | 関連する可能性がある |
| 関節の過可動性 | 関連する可能性がある |
| 痛みに対する感受性 | 関与する可能性がある |
| ビタミンD不足 | 関連が報告されている |
| 心理的ストレス | 関与する可能性がある |
| 親の愛情不足 | 原因とする根拠はない |
2026年のメタ解析では、ビタミンD濃度の低下や骨密度の低下との関連も報告されました。
ただし、これらは主として観察研究に基づくもので、原因と結果の関係が証明されたわけではありません。
現時点では、成長痛は単一の原因で起こるというより、複数の要因が関係する可能性があると考えられています。
成長痛と決めつけてはいけない症状
子供の足の痛みがすべて成長痛というわけではありません。
特に、次のような場合は注意が必要です。
- 片側の同じ場所ばかり痛む
- 朝になっても痛みが続いている
- 歩くと痛い、足を引きずっている
- 関節が腫れている
- 骨の特定の場所を押すと強く痛む
- 発熱や全身状態の悪化を伴う
- 痛みが次第に強くなっている
このような場合は、骨折、炎症性疾患、感染症、骨腫瘍など、別の病気が隠れている可能性があります。
特に、夜間痛があるという理由だけで成長痛と診断することはできません。
成長痛の治療は?
典型的な成長痛で、診察上も異常がなければ、通常は特別な治療を必要としません。
痛みが出たときには、足を優しくマッサージしたり、温めたりすると楽になることがあります。
運動を一律に禁止する必要はありませんが、活動量が多い日に痛みが強くなる場合は、無理のない範囲で調整するとよいでしょう。
繰り返す痛みが強い場合には、医師に相談してください。
まとめ
成長痛については、現在でも原因が十分に解明されていません。
ただし、少なくとも次のことは言えます。
成長痛は、骨が伸びるために起こる痛みとは証明されていません。
運動負荷が関係する可能性はありますが、単純な使いすぎだけでは説明できません。
また、弟妹の誕生や親の愛情不足が原因という説にも、十分な科学的根拠はありません。
成長痛という名称は誤解を招きやすく、医学的には「小児良性夜間四肢痛」という表現の方が症状の特徴をよく表しています。
大切なのは、子供の痛みを否定せず、必要な診察によって他の病気が隠れていないか確認することです。
参考文献
- O’Keeffe M, et al. Defining Growing Pains: A Scoping Review. Pediatrics. 2022;150(2).
- Risk factors associated with growth pain disorder in children: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Pediatrics. 2026. DOI: 10.3389/fped.2026.1806380.
- Smith M, et al. Assessments, diagnostic criteria and outcome measures for growing pains and persistent pain in the presence of restless leg syndrome in children: a scoping review. BMJ Open. 2025.

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