頚椎神経根症の診察では、ジャクソンテストという徒手検査を行うことがあります。
患者さんの頭部に圧迫を加えて、上肢への放散痛などが誘発されるかをみる検査です。
この「ジャクソン」という名前は、米国の整形外科医Ruth Jackson(1902~1994)に由来するとされています。
Ruth Jacksonは、米国で最初の女性の整形外科専門医であり、American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)に入会した最初の女性でもありました。
現在では女性の整形外科医も珍しくありませんが、彼女が専門医となったのは1937年です。当時としては非常に先駆的な存在でした。
興味深いことに、Jackson自身も頚椎の痛みに悩まされた経験があります。
1936年に自動車事故に遭い、その後数年間にわたって強い頚部痛が続きました。この経験が、彼女が頚椎疾患に強い関心を持つきっかけになったとされています。
その後、頚椎外傷や「cervical syndrome(頚部症候群)」の診療と研究に力を注ぎ、生涯に1万5,000人を超える頚椎疾患の患者を診察したとされています。
1949年には「The Cervical Syndrome」という論文を発表し、その後も頚椎疾患について多くの報告を行いました。
1964年の論文では、頭部に圧迫を加えて症状の変化を調べるHead Compression Testについて記載しています。
現在行われているジャクソンテストは、こうしたJacksonの頚椎診察法に由来すると考えられています。
さらにJacksonは、頚部を支えて睡眠中の痛みを軽減するための頚椎枕も考案しました。現在「Jackson Cervipillow」と呼ばれているものです。
自動車事故による頚部痛を自ら経験した整形外科医が、それをきっかけに頚椎疾患の研究を続け、現在も世界中で使われている診察法に名前を残したことになります。
診察室では何気なく「ジャクソンテストをします」と言っていますが、その名前の由来を調べてみると、100年近く前に活躍した一人の女性整形外科医の興味深い歴史がありました。

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