アスピリン喘息にセレコックスは使えるのか?

アスピリン喘息は、現在ではNSAIDs過敏喘息、AERD(aspirin-exacerbated respiratory disease)と呼ばれることがあります。通常のNSAIDs、特にCOX-1阻害作用の強い薬剤で、喘息発作や鼻症状が誘発される病態です。

整形外科では、ロキソニンなどのNSAIDsを処方する機会が多いため、この問題は実際の診療でよく遭遇します。

患者さんに「喘息があります」と言われても、それが通常の喘息なのか、NSAIDs過敏喘息なのか、本人には分からないことも少なくありません。

AERDでは、成人発症が多く、慢性副鼻腔炎や鼻茸を伴うことが非常に多いとされています。そのため、「成人になってから喘息を発症し、鼻茸や副鼻腔炎もある」という患者では、NSAIDs過敏を疑う手掛かりになります。

セレコックスは本当に使える?

セレコックス(セレコキシブ)は選択的COX-2阻害薬です。

AERDでは、発作の主な原因はCOX-1阻害と考えられているため、COX-2選択性の高いセレコキシブは、理論上は発作を起こしにくい薬剤です。

実際、海外ではかなり興味深い研究があります。

AERD患者60例にセレコキシブ100mg、200mgを投与した二重盲検試験では、喘息症状や鼻症状、FEV1低下を示した患者はいませんでした。

別の研究では、33例のアスピリン不耐症患者に対し、セレコキシブを10mg、30mg、100mgと段階的に投与し、その後400mgまで投与しましたが、肺機能悪化や症状誘発は認められませんでした。

さらにメタ解析でも、安定した軽症~中等症AERD患者では、COX-2阻害薬による呼吸器症状の増加は認められず、急性曝露は安全性が高いとされています。

つまり、「セレコキシブは倍量でも発作を起こさなかった」という話には、こうした400mg負荷試験が背景にあります。

しかし、日本では添付文書上「禁忌」

問題はここです。

日本のセレコックス添付文書では、

「アスピリン喘息またはその既往歴のある患者」

は禁忌とされています。理由は「重症喘息発作を誘発するおそれがある」とされています。

したがって、日本国内では、

「海外文献では安全性が高い」
一方で
「添付文書では禁忌」

というねじれがあります。

このため、整形外科外来で通常処方として簡単に使うのは難しいのが実情です。

アセトアミノフェンなら安全?

アセトアミノフェンも注意が必要です。

AERDでは高用量のアセトアミノフェンで反応する例があり、日本の添付文書では、アスピリン喘息またはその既往歴がある患者について、1回量300mg以下とするよう記載されています。

そのため、「NSAIDsがだめならアセトアミノフェン500mgでよい」と単純には言えません。

昔よく使われたソランタールは?

以前は、喘息患者やNSAIDsに不安のある患者に対して、ソランタール(チアラミド)が使われることがありました。

しかし現在では、アスピリン喘息患者への使用には注意が必要であり、以前のように「喘息ならソランタール」という単純な使い方はできません。

結局どう考えるか

AERDに対するセレコキシブは、海外の臨床研究ではかなり安全性が高い薬剤です。400mgまで投与しても発作を起こさなかった試験もあります。

しかし、日本では依然として添付文書上禁忌です。

したがって、

「アスピリン喘息でもセレコックスは安全だから普通に使える」

とまでは言えません。

一方で、

「AERDではCOX-2選択的阻害薬は比較的安全である」

という国際的なエビデンスが存在することも事実です。

この添付文書と国際的エビデンスのずれは、整形外科診療では非常に悩ましい問題だと思います。

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