後遺障害診断書を書くときに初めて訴えられた症状はどうする?

交通事故の治療が終了し、後遺障害診断書を作成する段階になって、患者さんからそれまで聞いていなかった症状を初めて訴えられることがあります。

例えば、頚部挫傷で数か月間通院していた患者さんが、症状固定時になって突然、「両手がずっとしびれています」と訴えた場合です。

ところが、それまでの診療録を確認しても、両手はもちろん、上肢のしびれについて一度も記載されていないことがあります。

このような場合、医師としてどう記載すべきでしょうか。

患者さんが現在訴えている症状ですから、「しびれはない」と書くことはできません。

しかし、症状固定時に初めて聞いた症状を、あたかも事故直後から一貫して続いていた症状であるかのように記載することもできません。

後遺障害診断書では、「現在患者さんが訴えていること」と「これまでの診療経過で確認できること」を区別して記載することが重要だと思います。

例えば、

「症状固定時に患者より両手のしびれの訴えあり。ただし、受傷後の診療経過中には同症状の訴えおよび診療録への記載はなく、発症時期、継続性、本件事故との因果関係は確認できない」

などと記載する方法が考えられます。

患者さんから「事故直後からしびれていたが、今まで言わなかった」と説明された場合も同様です。

「本人は事故直後から症状があったと申告している」という事実と、「それまでの診療録では確認できない」という事実を分けて記載します。

さらに重要なのは、新たに訴えられた症状を診察することです。

両手のしびれであれば、知覚、筋力、腱反射、筋萎縮、巧緻運動、病的反射などを改めて確認し、必要に応じて画像検査や神経伝導検査なども検討します。

そもそも両手のしびれは、単一の頚椎神経根障害だけでは説明しにくい症状です。

頚髄症、手根管症候群、肘部管症候群、末梢神経障害など、交通事故とは別の原因についても検討する必要があります。

後遺障害診断書は、患者さんが希望する症状をそのまま転記する書類ではありません。

一方で、医師が患者さんの訴えを否定するための書類でもありません。

患者さんの申告は申告として正確に記載し、これまでの診療録、診察所見、画像所見などから医学的に確認できる事実とは区別する。

そして、本件事故との因果関係について医学的に判断できない場合には、無理に因果関係を認めたり否定したりせず、「確認できない」と記載する。

後遺障害診断書では、このように患者さんの訴えと客観的な診療経過を混同せずに記載することが大切だと思います。

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