交通事故では、治療が続いていても、車の買い替えや生活費などのために「早くお金が必要なので示談したい」という患者さんがいます。
しかし、治療を続ける必要があるのに、金銭的な理由だけで早く示談してしまうのは慎重に考えた方がよいと思います。示談成立前でも、一定の条件で損害賠償金の一部を先に受け取る方法があります。
一つが、自賠責保険の「仮渡金」です。
被害者は、加害者が加入する自賠責保険会社に対して、最終的な損害額が確定する前でも、一定額の仮渡金を請求できます。傷害の場合は、ケガの程度に応じて5万円、20万円、40万円で、死亡の場合は290万円です。軽傷でも、医師の治療を11日以上必要とする場合には5万円の対象となります。これは最終的な自賠責保険金の前払いなので、後で確定した支払額から差し引かれます。
例えば、同じ事故で親子2人がそれぞれ傷害の仮渡金5万円の要件を満たせば、それぞれが請求主体となり、合計10万円ということになります。
もう一つが、任意保険会社への「内払い」です。
内払いとは、示談が成立する前に、損害賠償金の一部を先に支払ってもらうものです。休業損害など、示談まで待つと生活に困る費目について利用されることがあります。治療費については、任意保険会社が医療機関へ直接支払う「任意一括対応」が行われることもあります。
ただし、自賠責の仮渡金とは違い、任意保険会社の内払いには一律の法定額があるわけではありません。支払うかどうか、どの費目をいくら先払いするかは任意保険会社の判断によります。したがって、請求すれば必ず支払われる制度ではありません。
なお、以前は自賠責にも「内払い制度」がありましたが、これは平成20年10月1日に廃止されています。現在、自賠責で示談前に受け取れる制度として残っているのは「仮渡金」です。
治療を続ける必要があるにもかかわらず、「早く慰謝料をもらって車を買いたい」「生活費が必要だから早く示談したい」という理由で症状固定や治療終了を急ぐ場合には、まず自賠責の仮渡金や任意保険の内払いが利用できないか確認するのも一つの方法だと思います。

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