骨折すると熱が出る?「吸収熱」とは

骨折した後に熱が出ることがあります。

昔はこれを「吸収熱」と呼び、骨折によってできた血腫が吸収される過程で熱が出る、と説明されていました。

現在では、もう少し違った考え方をします。

骨折すると、骨だけでなく周囲の筋肉や血管なども損傷し、出血して血腫ができます。こうした組織損傷に対して体内で無菌性の炎症反応が起こり、IL-6などの炎症性サイトカインが産生されます。この全身性の炎症反応によって発熱すると考える方が、現在の理解に近いようです。

実際、外傷後の発熱は骨折だけにみられるものではありません。

ある研究では、受傷後48時間以内に38.3℃を超えた患者は、多発外傷で24%、単独体幹外傷で17%、単独頭部外傷で11%でした。また、急性脊髄損傷では60.4%に発熱を認めたとの報告もあります。

整形外科外傷の手術後では、590例中106例(18%)が38.5℃以上となり、発熱した患者の平均最高体温は38.8℃でした。

さらに小児の重症熱傷では、受傷後12時間以内に67%が38.5℃を超えたとの報告があります。

古い研究ですが、閉鎖性の大腿骨・脛骨骨折で入院した小児では、全例に38.3℃以上の発熱がみられたとの報告もあります。

これらの研究は対象となる外傷や年齢、発熱の基準などが異なるため、数字を単純に比較することはできません。しかし、骨折に限らず、大きな血腫や組織損傷を伴う外傷では、感染がなくても発熱することがあることが分かります。

したがって、「骨折したから熱が出る」というより、「外傷による組織損傷や炎症反応が大きいほど、非感染性の発熱が起こりやすい」と考える方がよいでしょう。

ただし、骨折後の発熱がすべてこのような炎症反応によるものとは限りません。感染症など、別の原因による発熱もあります。発熱が続く場合や、局所の腫れ・発赤などを伴う場合には、原因を確認する必要があります。

昔から使われてきた「吸収熱」という言葉は分かりやすいのですが、「血腫が吸収されるから熱が出る」と考えるよりも、現在では「外傷によって起こる炎症反応による発熱」と考える方が正確なようです。

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