レントゲンだけで椎間板ヘルニアと診断?

 腰痛で受診された患者さんから、「以前、他院で椎間板ヘルニアと診断された」と聞くことがあります。「MRIはいつ撮りましたか?」と尋ねると、「MRIは撮っていません。レントゲンで診断されました」と言われることが時々あります。

 日本整形外科学会などが監修する『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021』には、「単純X線像が腰椎椎間板ヘルニアの診断に有用であるとする報告はなかった」と明記されています。もちろん単純X線は他疾患の鑑別などには有用ですが、椎間板ヘルニアそのものをレントゲンで診断することはできません。

 では、なぜレントゲンだけで「椎間板ヘルニア」という診断が患者さんに伝わってしまうのでしょうか。ひょっとすると、「椎間板ヘルニアです」と説明した方が、患者さんには腰痛の原因として理解してもらいやすいからなのかもしれません。「レントゲンには大きな異常はありません」と説明すると、「では、なぜこんなに痛いのですか?」となり、説明が長くなります。

 腰痛では、画像で痛みの原因を一つに特定できないことも少なくありません。しかし患者さんとしては、痛い以上は何か「原因となる病名」が欲しい。「ヘルニアです」と言えば、医師も患者さんも話がすんなり終わる――そんな事情もあるのかなと思っています。

 ただ、患者さんはその診断名を何十年も覚えています。高校生の頃に「椎間板ヘルニア」と言われた患者さんが、何十年後にも「私はヘルニアがあります」と話されることがあります。レントゲンだけで付けた病名が、その患者さんにとって一生の病名になってしまうこともあります。

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