腰痛に対して行う「腰椎椎間関節ブロック」には、実は二つの異なる手技があります。
一つは、椎間関節そのものに針を進め、関節腔内へ局所麻酔薬やステロイドを注入する方法です。もう一つは、椎間関節を支配する腰椎後枝内側枝を標的とする「内側枝ブロック」です。
名称が似ているため混同されやすいのですが、診療報酬上は分けて考える必要があります。
椎間関節そのものに注射した場合
腰椎椎間関節は滑膜関節です。
したがって、X線透視や超音波などで椎間関節を確認し、針先を関節腔内へ進めて局所麻酔薬やステロイドを注入したのであれば、実際に行っている手技は「関節腔内注射」です。
令和8年度の診療報酬では、
G010 関節腔内注射 80点
とされています。
したがって、文字どおり腰椎椎間関節内へ薬剤を注入した場合には、G010関節腔内注射で算定するのが最も素直だと考えます。
「椎間関節ブロック」という名前だから神経ブロックとは限らない
ここが少し紛らわしいところです。
「椎間関節ブロック」という名称には「ブロック」と付いていますが、関節腔内へ薬剤を注入する手技であれば、標的は神経ではありません。
神経伝導を遮断することを目的に特定の神経を標的とする神経ブロックとは、手技の対象が異なります。
したがって、
「椎間関節ブロックという名称だからL100神経ブロック」
とはなりません。
何という名前で呼んでいるかではなく、実際に針先をどこへ置き、何を標的に注射したかで考える必要があります。
腰椎後枝内側枝ブロックは別
これに対して、椎間関節痛の診断・治療目的に行われる「腰椎後枝内側枝ブロック」は明確な神経ブロックです。
椎間関節を支配する脊髄神経後枝の内側枝を標的として局所麻酔薬を注入します。
令和8年度のL100には、
「頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック」
が明記されており、局所麻酔薬使用の場合は90点です。
つまり、
椎間関節内に注射
→ G010 関節腔内注射 80点
腰椎後枝内側枝を狙って注射
→ L100 頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック 90点
という違いになります。
10点しか違わないが、算定根拠は全く違う
点数だけを見ると80点と90点で大差ありません。
しかし、算定根拠は全く異なります。
関節内注射では、椎間関節腔内へ薬剤を注入したことが重要です。
一方、内側枝ブロックでは、神経を標的として神経伝導を遮断することが重要です。
したがってカルテにも、
「L4/5椎間関節内へ注入」
なのか、
「L3・L4後枝内側枝を標的としてブロック」
なのかを明確に記載しておく方がよいでしょう。
関節周囲への注射はどうなるのか
少し難しいのは、針を椎間関節付近まで進めたものの、実際には関節腔内には入っておらず、関節包周囲へ薬剤を注入した場合です。
この場合、「関節腔内注射」としてよいかは疑問が残ります。
G010は文字どおり「関節腔内注射」ですから、関節腔内への注入が確認できていない場合まで同じ扱いにするのは慎重であるべきでしょう。
また、単に椎間関節周囲へ局所麻酔薬を注入しただけなら、それを直ちに「腰椎後枝内側枝神経ブロック」とすることもできません。神経を標的とした手技である必要があります。
ここでも、深く刺したかどうかではなく、「何を標的として、どこへ薬剤を入れたか」が重要になります。
関節腔内に注入していない場合はG010関節腔内注射とは考えにくく、また内側枝を標的としていなければ神経ブロックにも該当しません。そのため、実際の手技が椎間関節周囲への局所的な薬剤注入であれば、既存項目ではG000局所注射が最も近いと考えます。
透視を使えば別の点数になるのか
透視下に行ったからといって、椎間関節内注射そのものが神経ブロックに変わるわけではありません。
透視は正確な針先位置を確認するための方法です。
診療報酬上の手技分類は、
「透視を使ったか」
ではなく、
「椎間関節内へ注入したのか」
「腰椎後枝内側枝をブロックしたのか」
によって決まると考えるのが分かりやすいでしょう。
高周波治療ならさらに別
腰椎後枝内側枝に対して神経破壊剤、高周波凝固法またはパルス高周波法を使用する場合は、L101の対象になります。
令和8年度では「頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック」はL101で340点です。
したがって、椎間関節性疼痛に対する治療でも、
関節内注射
内側枝への局所麻酔薬ブロック
内側枝への高周波治療
では、算定する項目がそれぞれ異なります。
まとめ
「腰椎椎間関節ブロック」という言葉だけでは、診療報酬上の算定項目は決まりません。
実際に椎間関節腔内へ局所麻酔薬やステロイドを注入したのであれば、G010関節腔内注射80点。
腰椎後枝内側枝を標的として局所麻酔薬を注入したのであれば、L100頸・胸・腰椎後枝内側枝神経ブロック90点。
と考えるのが、令和8年度の点数表上は最も自然です。
重要なのは「椎間関節ブロック」という通称ではなく、針先がどこにあり、何をブロックしたのかです。
本稿は公開されている令和8年度診療報酬点数表等をもとにした解説です。個々の症例の算定可否は、実際の手技内容や審査上の取扱いによって判断されます。

コメント