テニス肘への注射は何で算定するの? 腱鞘内注射、トリガーポイント注射、それとも局所注射?

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)に対して、局所麻酔薬やステロイドを注射することがあります。

この注射を診療報酬上、何で算定するのが適切なのでしょうか。

いつ頃からそうなったのかは分かりませんが、最近ではテニス肘への注射を「腱鞘内注射」で算定する医療機関が多いようです。

一方、私はトリガーポイント注射として算定する考え方も成り立つと思っています。しかし、これには反対意見もあります。

そもそも、解剖学的に考えると、通常のテニス肘への注射は単なる局所注射なのかもしれません。

テニス肘は腱鞘炎なのか?

テニス肘の正式名称は、上腕骨外側上顆炎です。

主に短橈側手根伸筋の起始部に障害が生じる疾患であり、近年では炎症だけでなく、腱の変性が重要な病態と考えられています。

一般的なテニス肘への注射は、上腕骨外側上顆付近の圧痛部、すなわち伸筋腱の起始部周辺に行います。

一方、腱鞘内注射は、本来、腱と腱鞘の間に薬液を注入する手技です。

例えば、ばね指に対する腱鞘内注射が代表的です。

テニス肘は、ばね指のような狭窄性腱鞘炎とは解剖学的に異なります。

実際、日本整形外科学会の説明でも、テニス肘に対する治療として、肘の外側に局所麻酔薬とステロイドを注射すると記載されています。

また、厚生労働省に提出された医療技術評価資料でも、腱鞘内注射は腱と腱鞘の間への注射として説明され、対象疾患には狭窄性腱鞘炎やばね指が挙げられています。

したがって、通常のテニス肘への注射を、解剖学的な意味で腱鞘内注射と呼ぶことには疑問があります。

トリガーポイント注射ではいけないのか?

トリガーポイント注射は、診療報酬上、L104に規定されています。

厚生労働省の通知では、圧痛点に局所麻酔薬、あるいは局所麻酔薬を主剤とする薬剤を注射する手技とされています。

テニス肘では、上腕骨外側上顆付近に明瞭な圧痛点が認められます。

その圧痛点に局所麻酔薬を注射するのであれば、トリガーポイント注射として算定する考え方も成り立つのではないでしょうか。

ただし、トリガーポイント注射は、一般に筋・筋膜性疼痛などに対して行われる手技として理解されることが多く、腱付着部の障害であるテニス肘への注射とは区別すべきだという意見もあります。

また、局所麻酔薬を使用せず、ステロイドのみを注射した場合には、通知上のトリガーポイント注射の定義に合致するかという問題があります。

私は、圧痛点に局所麻酔薬を注射するという手技の実態から、トリガーポイント注射として算定する余地があると考えています。

もっとも、これは私の解釈であり、テニス肘に対するトリガーポイント注射の算定が全国一律に認められていることを意味するものではありません。

本来は局所注射ではないのか?

解剖学的な観点から考えると、テニス肘への注射は、伸筋腱起始部周辺への局所注射です。

実際の注射部位が腱鞘内でも関節腔内でもなく、腱付着部周辺の軟部組織であれば、局所注射として考えるのが自然かもしれません。

ただし、診療報酬では、医学的な手技の名称と算定項目が必ずしも一対一で対応しているわけではありません。

そのため、解剖学的には局所注射であっても、診療報酬上どの項目で算定するかについて、解釈が分かれることがあります。

なお、局所注射として扱う場合にも、実際の注入部位や方法に応じて、診療報酬点数表上の該当項目を判断する必要があります。

肘関節炎として関節腔内注射を算定するのは不適切

一方、明らかに不適切だと考える算定方法があります。

それは、テニス肘の患者に対して、実際には上腕骨外側上顆周辺に注射しているにもかかわらず、「肘関節炎」という傷病名を付け、関節腔内注射として算定することです。

テニス肘は、通常、肘関節内の炎症ではありません。

また、上腕骨外側上顆周辺への注射は、肘関節腔内への注射とは異なります。

関節腔内に注射していないのであれば、関節腔内注射として算定することは適切ではありません。

これは、単に傷病名の付け方の問題ではありません。

診療報酬は、実際に行った医療行為に基づいて請求するものです。

関節腔内注射を行っていないのに、算定するためだけに肘関節炎という傷病名を付けることは、避けるべきです。

もちろん、テニス肘とは別に肘関節炎が存在し、実際に関節腔内注射を行った場合は別です。

腱鞘内注射として認められているなら、それでよいのか?

仮にテニス肘への注射が腱鞘内注射として査定されずに認められていたとしても、それだけで解剖学的に腱鞘内注射であることが証明されるわけではありません。

審査上の取扱いと、医学的な手技の分類は分けて考える必要があります。

一方で、審査上、一定の取扱いが定着しているのであれば、その根拠を確認することにも意味があります。

私が知りたいのは、テニス肘への注射を腱鞘内注射として算定することが、どのような根拠に基づいて認められているのかという点です。

全国共通の通知や疑義解釈があるのでしょうか。それとも、審査上の運用として認められているのでしょうか。

今回確認した資料からは、テニス肘への注射について、腱鞘内注射、トリガーポイント注射、局所注射のいずれで算定すべきかを明示した全国統一の規定は確認できませんでした。

私の考え

テニス肘への注射については、次のように考えています。

  • 腱鞘内注射:実際に腱鞘内へ注射しているのか、解剖学的に疑問があります。
  • トリガーポイント注射:圧痛点に局所麻酔薬を注射するのであれば、算定する余地があると考えます。
  • 局所注射:実際の注射手技を最も素直に表現しているのかもしれません。
  • 関節腔内注射:関節腔内に注射していないのであれば、不適切です。

診療報酬の算定方法については、医師同士でも意見が分かれることがあります。

しかし、意見が分かれるからこそ、医学的な根拠と診療報酬上の規定を確認し、議論することに意味があるのではないでしょうか。

「多くの医療機関がそう算定しているから正しい」というのではなく、実際にどこへ注射しているのか、そしてその算定根拠は何なのかを考える必要があると思います。


参考資料

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