一度手術を行った部位に、再び手術を行った場合、手術料は算定できるのでしょうか。
「再手術(Re OPE)は前回の手術と一連だから算定できない」「一度手術料を算定した部位では、二度目の手術料は算定できない」という話を聞くことがあります。
しかし、診療報酬の規定を読む限り、再手術だからという理由だけで、一律に手術料を算定できないという一般的な規定は見当たりません。
一方、初回手術の不十分な部分を修正するための再手術まで、すべて別に算定できるというわけでもありません。
再手術の算定について、具体例を挙げながら考えてみます。
1.同一手術野・同一病巣の規定は、原則として同時手術についてのもの
診療報酬には、同一手術野または同一病巣に対して複数の手術を行った場合の算定制限があります。
例えば、一度の手術で同じ部位に複数の術式を実施した場合、それぞれの手術料を単純に合算できるとは限りません。
しかし、これは原則として、同時に複数の手術を行った場合の取扱いです。
術後に新たな医学的必要性が生じ、別の日に再手術を行った場合まで、一律に算定できないとする規定ではありません。
したがって、同じ部位を再び手術したという理由だけで、前回の手術と同時に行ったものとみなすことはできません。
2.「一連につき」と定められている手術
一方、診療報酬には、複数回の治療をまとめて「一連」として扱う手術があります。
例えば、K533 食道・胃静脈瘤硬化療法です。
このような術式では、一連の治療期間について個別の規定があり、その期間内に複数回実施しても、手術料をその都度算定できるわけではありません。
食道・胃静脈瘤硬化療法では、1週間を一連の治療期間として扱う規定が知られています。
つまり、初回の治療から1週間以内に再び同じ治療を行っても、原則として新たな手術料は算定できません。
しかし、これはその術式について個別に定められた算定方法です。
すべての手術について「1週間以内の再手術は算定できない」という一般原則があるわけではありません。
3.ペースメーカー関連手術にも1週間の規定がある
ペースメーカー関連手術にも、実施日の間隔によって算定が制限される規定があります。
K597 ペースメーカー移植術と、K596 体外ペースメーキングです。
両者の実施日の間隔が1週間以内の場合には、体外ペースメーキングの費用を別に算定できず、ペースメーカー移植術の所定点数のみを算定する取扱いがあります。
このように、診療報酬では、一定期間内に行われた複数の手術について算定を制限する場合、個別に規定が設けられています。
逆に考えれば、特定の手術についてわざわざ期間制限が定められていることは、すべての再手術に共通する一律の期間制限があるわけではないことを示しているとも考えられます。
4.以前は「1週間以内の再手術は算定できない」という規定があった?
以前は「1週間以内の再手術は算定できない」という取扱いがあったようです。
実際に、昔はそのような規定があったと記憶している医師もいます。
昭和63年頃に廃止されたのではないかと思いますが、正確な廃止時期については確認できていません。
少なくとも、現在の診療報酬の手術通則には、すべての再手術について1週間以内は算定できないという一律の規定は見当たりません。
ただし、前述したように、個別の術式について1週間などの期間制限が設けられている場合は、その規定に従う必要があります。
5.手根管症候群の再手術は算定できるのか
手根管症候群では、手根管開放術を行った後に、症状が再発することがあります。
例えば、初回手術後にいったん症状が改善したものの、数か月後に再びしびれが出現し、正中神経周囲に瘢痕癒着が認められた場合です。
このような症例に対して、正中神経剥離術を行うことがあります。
これは、単に前回の手根管開放術をやり直すのではなく、術後に生じた瘢痕癒着という病態に対して、新たに神経剥離術を行うものです。
したがって、実際に神経剥離術に該当する操作を行ったのであれば、神経剥離術として算定することが考えられます。
私が調べた範囲では、「前回の手根管開放術から何か月以上経過しなければ神経剥離術を算定できない」といった期間制限は見当たりませんでした。
重要なのは、前回の手術からの経過期間だけではなく、再手術を必要とした病態と実際に行った手術内容です。
ただし、単に手根管を再開放しただけで、神経剥離術として算定できるわけではありません。
6.骨折手術の翌日に再固定した場合
例えば、骨折観血的手術を行った翌日に、スクリューの位置や固定性に問題が判明し、再手術を行った場合です。
このような再手術は、前回の手術で不十分だった部分を修正するためのものです。
実際の審査では、前回の手術と一連の治療として扱われ、二度目の手術料が認められない可能性が高いと思います。
しかし、すべての術式について「翌日の再手術は算定できない」と明記された一般規定があるわけではありません。
では、なぜ算定が認められないのでしょうか。
ここには、診療報酬の審査における暗黙の考え方があるように思います。
初回手術が不十分だったために再手術が必要になった場合、再手術の分まで手術料を認めると、不十分な手術を繰り返した医療機関の方が多くの診療報酬を得ることになってしまいます。
これは合理的とはいえません。
ただし、初回手術が不十分だったかどうかの判断は簡単ではありません。固定材料の問題が生じたからといって、必ずしも術者の技術が不十分だったとは限らないからです。
したがって、単に再手術になったという事実だけで、初回手術が不適切だったと判断することもできません。
7.術後出血で再手術した場合
術後出血のために再開創し、止血を行うことがあります。
このような場合も、前回の手術と一連の治療として扱われ、再手術の手術料を別に算定できないことがあると考えられます。
ただし、術後出血は、適切な手術を行っていても発生する可能性があります。
再手術が必要になったからといって、必ずしも初回手術が不適切だったわけではありません。
また、手術料を別に算定できない場合でも、再手術に伴う麻酔料は算定できる場合があります。
実際に行った処置内容によっては、創傷処理としての算定を検討できる場合もあるでしょう。
ただし、創傷処理として算定できるかどうかは、その手技の内容や算定要件によって判断する必要があります。
8.術中に誤って神経を切断した場合
再手術ではありませんが、関連する例として、術中に神経を誤って切断した場合があります。
例えば、ある手術中に誤って神経を切断し、その場で神経縫合術を行ったとします。
実際に神経縫合という手技を行っていても、通常は神経縫合術の手術料を追加算定できません。
これは、本来の手術中に生じた損傷を修復するための操作だからです。
一方、外傷によって神経が切断されており、その修復を目的として神経縫合術を行った場合は、事情が異なります。
同じ神経縫合という手技であっても、もともと存在した損傷を治療する場合と、手術中に生じさせた損傷を修復する場合とでは、診療報酬上の評価が異なるわけです。
ただし、術中の神経縫合術が追加算定できない理由には、同一手術野での複数手術に関する算定制限も関係するため、医原性損傷という理由だけで説明できるとは限りません。
9.再手術の算定は何によって判断するのか
以上を整理すると、再手術の算定では、次の点が重要になると考えます。
- 該当する手術に「一連につき」などの個別規定があるか。
- 前回の手術から一定期間内の算定を制限する規定があるか。
- 再手術を必要とした新たな病態があるか。
- 初回手術の不十分な部分を修正するための手術なのか。
- 実際に行った操作が、請求する術式に該当するか。
- 手術料が算定できない場合でも、麻酔料や処置料などを算定できるか。
特に重要なのは、再手術を必要とした理由を診療録や手術記録に明確に記載することです。
「再手術を実施」と記載するだけでなく、再手術に至った経緯、術中所見、実際に行った操作を記録しておく必要があります。
まとめ
再手術は、一度手術した部位だからという理由だけで、必ず算定できなくなるわけではありません。
診療報酬には、同一手術野・同一病巣に複数の手術を同時に行った場合の算定制限がありますが、これは別の日に行うすべての再手術を一律に算定不可とするものではありません。
また、食道・胃静脈瘤硬化療法やペースメーカー関連手術のように、一定期間内の算定を制限する個別規定が設けられている術式もあります。
一方、初回手術の不十分な部分を修正するための再手術については、前回の手術と一連の治療として扱われ、手術料を別に算定できない場合があります。
再手術だから算定できないのでも、医学的に必要だから必ず算定できるのでもありません。
前回の手術との関係、再手術が必要になった理由、実際に行った手術内容、そして個別の算定規定によって判断する必要があります。
「Re OPEはすべて1回しか算定できない」という考え方は、少し違うのではないでしょうか。
本稿は公開されている令和8年度診療報酬点数表等をもとにした解説です。個々の症例の算定可否は、実際の手技内容や審査上の取扱いによって判断されます。

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