小児運動器疾患指導管理料は病名で決まるのか?―成長と継続管理が大前提

小児運動器疾患指導管理料は、20歳未満の運動器疾患の患者に対する管理料です。

対象疾患として、先天性股関節脱臼、斜頸、内反足、ペルテス病、脳性麻痺、脚長不等、側弯症などが列挙されています。また、装具を使用する患者、継続的なリハビリテーションが必要な患者なども対象として記載されています。

この部分だけを見ると、

「側弯症なら算定できる」
「装具を使えば算定できる」
「20歳未満なら幅広い整形外科疾患で算定できる」

と考えてしまいそうです。

しかし、この管理料はそのような「病名に対する加算」ではないと思います。

「継続的な管理」が最初に書かれている

通知では、小児運動器疾患指導管理料について、

「運動器疾患に対し継続的な管理を必要とするものに対し、専門的な管理を行った場合」

に算定するとされています。

点数表本体にも、

「計画的な医学管理を継続して行い」

と明記されています。

つまり、この管理料を考えるときに最初に見るべきなのは病名ではなく、

「この患者は、成長過程において継続的な専門管理を必要とするのか」

という点ではないでしょうか。

なぜ普通の整形外科専門医だけでは算定できないのか

施設基準では、担当医について、

「整形外科の診療に従事した経験を5年以上有すること」

だけでなく、

「小児の運動器疾患に係る適切な研修を修了していること」

まで求めています。

整形外科専門医だから自動的に算定できる管理料ではありません。

これも、この管理料が単なる小児の整形外科診療ではなく、成長に伴って変化する運動器疾患を専門的に追跡し、その時々で治療方針を判断することを評価しているからだと考えると理解しやすいと思います。

令和4年度改定でも「継続」が強調されている

令和4年度改定では対象年齢が12歳未満から20歳未満へ拡大されました。

厚生労働省はその理由を、

「小児に対する継続的な診療を一層推進する観点から」

と説明しています。

さらに対象患者の一つとして、

「手術適応の評価等、成長に応じた適切な治療法の選択のために、継続的な診療が必要な患者」

と明記されています。

ここにも「成長」と「継続」という、この管理料の基本的な考え方が表れています。

側弯症なら何歳でも算定できるのか

側弯症は対象疾患として明記されています。

しかし、「側弯症」という病名があれば20歳未満ならすべて算定できる、と考えるのは疑問です。

たとえば16歳で初めて特発性側弯症と診断された患者でも、まだ成長が残っていて、側弯の進行を定期的に確認し、装具治療や手術適応を検討する必要がある患者であれば、まさにこの管理料の趣旨に合います。

一方、すでに骨成熟がほぼ終了しており、今後成長に伴って側弯が進行する可能性が低く、特別な治療も予定せず経過を見るだけの患者ではどうでしょうか。

「側弯症」という病名だけを理由に算定するのは、この管理料が求める「成長に応じた継続的な専門管理」とは少し違うのではないかと思います。

「装具を使っている」だけでもない

通知には「装具を使用する患者」も対象として記載されています。

しかし、これも「装具を処方すれば算定できる」という意味ではないでしょう。

大前提として、

「運動器疾患に対し継続的な管理を必要とするもの」

でなければなりません。

一時的な外傷に装具を使用したからといって、それだけで小児運動器疾患指導管理料の対象になると考えるのは無理があります。

最近、足関節捻挫について小児運動器疾患指導管理料を認めない審査情報が示されているのも、この考え方と整合します。

オスグッド病はどうか

オスグッド病は成長期に起こる疾患です。

その意味では一見、この管理料との相性がよさそうに見えます。

しかし、多くのオスグッド病は保存療法で経過をみながら、スポーツ活動を調整し、成長とともに症状が軽快していきます。

通常のオスグッド病を一律に、

「成長に応じた適切な治療法の選択のため、長期にわたり専門的な継続管理が必要な疾患」

と考えるのは難しいと思います。

重症例など個別に要件を満たす患者まで否定するものではありませんが、「オスグッド病だから算定」という考え方は適切ではないでしょう。

腰椎分離症はどうか

成長期腰椎分離症は少し難しいところです。

活動性の分離症では、MRIなどで病期を評価し、運動休止、装具療法、リハビリテーション、スポーツ復帰などを継続して判断することがあります。

そのため、個々の症例によっては継続的な専門管理という要件に合致する可能性があります。

しかし、これも「腰椎分離症だから」「コルセットを使ったから」というだけではありません。

また、数か月程度の治療で骨癒合して終了することを最初から想定している症例を、小児運動器疾患指導管理料の典型例と考えてよいのかは慎重に考える必要があります。

半年以内に治癒する疾患を想定した管理料なのか

この管理料は、初回算定月から6か月以内は月1回、その後は6か月に1回算定する仕組みになっています。

この算定方法自体からも、短期間で治癒する疾患を何でも対象にすることを想定した制度ではないことがうかがえます。

もちろん、管理を開始した患者が予想以上に早く改善して半年以内に終了することまで否定されるものではありません。

しかし、最初から数週間から数か月で治癒・終了することが通常の疾患を、この管理料の対象として広く扱うのは、制度の趣旨とは合いにくいと思います。

小児運動器疾患指導管理料は「病名加算」ではない

結局、この管理料を考えるうえで最も重要なのは、

「何という病名がついているか」

ではなく、

「成長過程にある運動器疾患について、成長に応じて治療方針を変えながら、専門的・計画的に継続管理する必要があるか」

という点だと思います。

対象疾患一覧や「装具を使用する患者」という部分だけを切り取って算定可否を判断すると、この管理料の本来の趣旨を見失います。

小児運動器疾患指導管理料は、病名に対する加算ではなく、成長過程にある運動器疾患を継続的に専門管理することに対する評価である。

これが、この管理料を理解するうえで一番大切な点ではないでしょうか。

参考

厚生労働省「小児運動器疾患指導管理料」
厚生労働省資料

厚生労働省「令和4年度診療報酬改定 小児運動器疾患指導管理料の見直し」
令和4年度改定資料

本稿は公開されている診療報酬点数表、通知、審査情報をもとにした解説です。個々の症例の算定可否は、実際の診療内容等によって判断されます。

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