60代女性が「膝の前が腫れている」と受診しました。前医では別々の日に2人の医師に診てもらい、いずれも「穿刺して水を抜く必要はない」と説明されたそうです。本人は「水を抜いてほしい」と希望していました。当院で穿刺すると約20 mLの液が引け、膝の前の膨らみはその場でかなり小さくなりました。
調べてみると、確かに最近は、感染を疑わない膝蓋前滑液包炎では、安静や圧迫などの保存療法が基本で、むやみに穿刺しないという考え方があります。類似した肘頭滑液包炎の比較試験でも、「圧迫+NSAIDs」と「穿刺+圧迫+NSAIDs」で、治癒までの期間は3.2週と3.1週。穿刺しても治るまでの期間はほとんど変わりませんでした。
しかし、治るまでの期間が同じなら、穿刺する意味はないのでしょうか。飛行機なら、ファーストクラスでもエコノミークラスでも目的地に着く時間は同じです。しかし、そこまでの快適さは違います。20 mLも貯留していれば、穿刺によって膨らみや張った感じはその場で軽くなります。ところが、この研究では患者満足度や穿刺直後の症状改善は評価されていません。
もちろん、小さくて痛くもなく、本人も気にしていないものまで穿刺する必要はないでしょう。しかし、「穿刺してもしなくても治る時期は同じ」ことと、「穿刺する意味がない」ことは同じではありません。大きく腫れ、本人が「抜いてほしい」と希望している患者さんまで一律に穿刺しない方がよいのか。穿刺による感染などの合併症も含めて考える必要があるのでしょう。
昔から普通に行ってきた治療でも、治療の考え方は少しずつ変わっているものだと改めて思いました。

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