前十字靱帯(ACL)断裂は手術が必要?

スポーツで前十字靱帯(ACL)を断裂した患者さんから、「ACLが切れたら、どのくらいの人が手術をするのですか?」と聞かれることがあります。

これは簡単な質問のようですが、実は答えるのが難しい質問です。

ACL断裂と診断された患者さん全体のうち、何%が最終的に再建手術を受けているのかを示す正確な数字は、よく分かっていません。

そもそもACLを損傷した人のすべてが医療機関を受診しているわけではありません。また、年齢、スポーツの種類、今後どの程度スポーツを続けたいのか、膝くずれ(giving way)があるか、半月板損傷を合併しているかなどによって、手術を選択する割合は大きく変わります。

最近の海外の全国登録研究では、ACL損傷後にまず手術をせずに治療する方針となった患者さんのうち、2年後にも63%が手術を受けずに経過していました。

ただし、これは「ACL断裂の約6割は手術をしなくてよい」という意味ではありません。最初から手術を選択した患者さんは、この数字には含まれていないからです。

では、どのような患者さんで手術を考えるのでしょうか。

サッカー、バスケットボール、バドミントン、テニス、スキーなど、急な方向転換やジャンプ、着地を繰り返すスポーツに復帰したい場合には、ACL再建術を検討することが多くなります。

一方、今後そのようなスポーツを行う予定がなく、日常生活で膝くずれを起こさない場合には、必ずしもACLを再建しなければならないわけではありません。

ACLが断裂していても、筋力や神経筋機能によって膝の安定性を保ち、手術をせずに希望する生活を送れる人がいます。このような患者さんは「coper」と呼ばれることがあります。

反対に、リハビリテーションを行っても膝くずれを繰り返す場合や、方向転換を伴うスポーツへの復帰を希望する場合、治療が必要な半月板損傷などを合併している場合には、手術を検討する必要性が高くなります。

つまり、ACL断裂では「切れているから手術」「何歳だから手術」と単純に決めるものではありません。

重要なのは、

・今後どのようなスポーツや仕事をしたいのか
・日常生活や運動中に膝くずれがあるのか
・半月板など他の組織を損傷していないか
・リハビリテーションによって十分な膝機能が得られるか

などを総合して判断することです。

ACL断裂の患者さんにとって大切なのは、「他の人の何%が手術をしているか」よりも、「自分がこれから何をしたいのか、そのために手術が必要なのか」を考えることだと思います。

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