大分前に、「肘内障は整復しなくても1週間くらいで自然に整復される」という記載を読んだ記憶があります。昨日あらためて探してみましたが、その記載そのものは見つけられませんでした。
肘内障は日常診療では徒手整復するのが普通ですので、何もしなかった場合の自然経過を調べた報告は意外に少ないようです。
ところが最近、興味深い報告が出ています。
和光先生らは、徒手整復を試みても整復できなかった肘内障2例を、外固定せず超音波で経過観察しました。1例は受傷7日後、もう1例は9日後に自然整復が確認されています。
さらに2026年には、徒手整復不能であった肘内障6例を同様に経過観察した報告がありました。全例が手術も外固定もせず自然整復し、痛みなく腕を使い始めるまでの中央値は4日、超音波で整復を確認できたのは中央値10日、全例2週間以内でした。通常の肘内障の徒手整復成功率は74~99%とされており、そもそも整復不能例自体が少ないのですが、そのような症例でさえ自然整復することがあるわけです。
一方で、肘内障を放置すると輪状靱帯の嵌頓が持続し、橈骨頭が変形して完全脱臼となり、最終的には橈骨短縮骨切り術などの手術が必要になる、という説明を見かけることがあります。
そのような慢性化した症例が絶対にないとは言えませんし、徒手整復できず手術となった症例も報告されています。しかし、これはかなり稀な経過と思われます。少なくとも、一般的な肘内障の自然経過として「放置すると橈骨頭の成長障害から完全脱臼へ進行する」と説明するのは、少し大げさではないでしょうか。最近の報告は、むしろ徒手整復不能例でも自然整復し得ることを示しています。
考えてみれば、肘内障は近代になって突然出現した病気ではありません。江戸時代の子どもにも当然あったはずです。当時どのように扱われていたのかを示す文献は私は見つけられませんでしたが、すべてが後遺症を残したとは考えにくく、多くは自然に整復されていたと考える方が自然な気がします。
もちろん、これは「肘内障は放っておけばよい」という意味ではありません。骨折など別の外傷との鑑別も必要ですし、肘内障と診断したなら通常は徒手整復を行います。
ただ、「整復しなければどうなるのか」という自然経過について考えると、肘内障には自然整復する性質があり、徒手整復不能例でさえ数日から2週間程度で自然整復することがある、ということになります。
昔読んだ「肘内障は放っておいても1週間くらいで自然に整復される」という記憶も、あながち間違いではなかったのかもしれません。
参考文献
Wako M, et al. Irreducible pulled elbow followed with supervised neglect and ultrasonography: Two case reports. Jt Dis Relat Surg. 2026;37:273-276.
Wako M, et al. Ultrasonographic natural history of irreducible pulled elbow managed by supervised neglect. J Orthop Sci. 2026 Sep 22. Online ahead of print.

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