ビタミンDの骨折予防効果をどう考えるか

「ビタミンDは骨に良い」と昔から言われています。一方で、最近の大規模研究やシステマティックレビューを見ると、「ビタミンDを飲んでも骨折はあまり減らない」という結果も少なくありません。

では、ビタミンDは骨折予防には役に立たないのでしょうか。

結論から言えば、私は、

「ビタミンD単独には強い骨折予防効果は期待できない。しかし、ビタミンD不足を放置してよいわけではない」

と考えるのが最も分かりやすいと思います。

ビタミンD単独では骨折はあまり減らない

2014年のCochraneレビューでは、閉経後女性や高齢男性を対象とした53試験、約9万2千人が検討されています。

ビタミンD単独では、股関節骨折についてRR 1.12、その他の骨折についてRR 1.03で、明らかな骨折予防効果は認められませんでした。

一方、ビタミンDとカルシウムを併用すると、股関節骨折はRR 0.84、全骨折はRR 0.95と、効果は大きくありませんが骨折をわずかに減らしました。

したがって、「ビタミンDを飲んでいれば骨折を防げる」というほど単純ではありません。

なぜビタミンDを飲んでも骨折が大きく減らないのか

これは、骨折がビタミンDだけで決まる病気ではないからでしょう。

高齢者の骨折には、

骨密度
骨質
転倒
筋力
バランス能力
視力
服用薬
認知機能
住環境

など、非常に多くの要因が関係します。

たとえばビタミンD不足を正常化して骨代謝が改善しても、転倒しやすい状態や筋力低下、視力低下などがそのままであれば、当然ながら骨折を完全に防ぐことはできません。

大勢の高齢者にビタミンDだけを一律に投与しても、骨折率に大きな差が出にくいのは、ある意味当然なのかもしれません。

では、ビタミンD不足を治療する意味はないのか

これは別の問題です。

ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収に重要で、骨代謝を正常に保つために必要な栄養素です。

明らかなビタミンD不足が続けば、カルシウム吸収が低下し、二次性副甲状腺機能亢進を介して骨代謝に悪影響を与えます。さらに高度の欠乏では骨軟化症の原因となり、筋力低下にも関係します。

したがって、

「ビタミンD単独で骨折が減らなかった」
ことと、
「ビタミンD不足を補う意味がない」
ことは同じではありません。

ビタミンDは「骨折を直接防ぐ薬」というより、「正常な骨を維持するために必要な土台」と考えた方がよいでしょう。

「ビタミンD不足」と「骨折予防」は分けて考える

ここが最も重要なところです。

たとえば鉄欠乏があれば鉄を補います。しかし、鉄を飲んだからといって高齢者の死亡率が大幅に下がるわけではありません。それでも鉄欠乏を放置してよいことにはなりません。

ビタミンDも似ています。

不足しているものを正常化する治療の意義と、その治療だけで「骨折」という最終的なイベントをどれだけ減らせるかは、別の問題です。

したがって、骨折予防効果が小さいという研究結果だけを見て、「ビタミンDは不要」と結論づけるのは適切ではないと思います。

天然型ビタミンDと活性型ビタミンD

もう一つ注意したいのは、

「サプリメント=未活性型」
「処方薬=活性型」

と単純に分けられるわけではないことです。

市販のビタミンDサプリメントの多くは、コレカルシフェロールなどの天然型ビタミンDです。

一方、医療用にはアルファカルシドール、カルシトリオール、エルデカルシトールなどの活性型または活性型関連製剤がありますが、デノタスチュアブル配合錠のように天然型ビタミンD3を含む医療用製剤もあります。

したがって、「処方薬だから活性型」というわけではありません。

活性型なら骨折を防げるのか

これも単純ではありません。

Cochraneレビューには、骨粗鬆症患者を対象にカルシトリオールやアルファカルシドールを検討した試験も含まれていますが、活性型ビタミンDを使えば骨折が大幅に減る、というほど強いエビデンスが得られているわけではありません。

また、活性型ビタミンDでは高カルシウム血症に注意が必要です。

同レビューでは、ビタミンDまたはビタミンD関連化合物を使用した群では高カルシウム血症が増加し、特にカルシトリオールではその傾向が大きくなっていました。

したがって、「天然型ではなく活性型を十分量使えばよい」というほど簡単な問題ではありません。

骨折予防の主役はビタミンDだけではない

骨粗鬆症による骨折を本当に減らそうとすれば、ビタミンDだけでは不十分です。

骨折リスクが高い患者では、骨密度や既存骨折などを評価したうえで、必要に応じてビスホスホネート、デノスマブ、ロモソズマブ、テリパラチドなどの骨粗鬆症治療を行うことが重要です。

さらに、転倒予防、筋力維持、適切な運動、栄養、住環境の改善なども欠かせません。

ビタミンDはその中の一つであり、骨折予防全体の「土台の一部」と考えるのがよいでしょう。

まとめ

「ビタミンDは骨折予防効果に乏しい」という表現だけを見ると、「それなら飲む意味はないのではないか」と思ってしまいます。

しかし、実際には、

ビタミンD単独で骨折を大幅に減らす効果は期待しにくい。

一方で、明らかなビタミンD不足を補正する意味はある。

という二つを分けて考える必要があります。

ビタミンDは万能な骨折予防薬ではありません。しかし、正常なカルシウム代謝と骨代謝を維持するために必要な栄養素です。

「骨折を防ぐ薬」というより、「骨を正常に保つための土台」と考えると、ビタミンDの位置づけが分かりやすいと思います。

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