橈骨遠位端骨折は肘まで固定した方がよい?

橈骨遠位端骨折(手首の骨折)を手術せずに治療する場合、骨折部をギプスやシーネで固定します。

このとき、手首から前腕までを固定する「短腕固定」と、肘を越えて固定する「長腕固定」があります。当院では、長腕固定が必要な場合には、肘上から2枚のシーネで挟むように固定する「サンドイッチシーネ」を使用しています。

では、橈骨遠位端骨折では、肘まで固定した方がよいのでしょうか。

実際にどちらの方法が多く使われているのか気になって調べてみましたが、日本の整形外科医を対象として、短腕固定と長腕固定の使用割合を調査した報告は、私が調べた限り見当たりませんでした。

海外では、転位のない骨折や安定した骨折では、肘を越えない短腕ギプスや前腕シーネが多く用いられています。一方、徒手整復直後や腫れの強い症例、不安定性が疑われる症例などでは、前腕の回内・回外を抑えるため、sugar-tong splintなど肘を越える固定が用いられることもあります。

短腕固定と長腕固定のどちらがよいかについては、これまでに比較研究が行われています。

最近の研究をまとめると、再転位の頻度、レントゲン上の成績、手術が必要となる頻度、最終的な手関節機能などについて、短腕固定と長腕固定の間に明らかな差は認められていません。

したがって、橈骨遠位端骨折だからといって、すべての患者さんを肘上まで固定する必要はないと考えられます。

ただし、ここで一つ疑問があります。

これまでの研究は、「前腕を回内・回外したときに骨折部が強く痛む患者」だけを抽出して、短腕固定と長腕固定を比較したものではありません。また、最終的な骨癒合や手関節機能だけでなく、固定している期間の痛みがどちらの方法で少ないのかについても、十分に検討されているとはいえません。

橈骨遠位端骨折の患者さんに前腕をゆっくり回内・回外してもらうと、ほとんど痛まない方がいる一方、骨折部に強い痛みを訴える方もいます。

当院では、回内・回外しても骨折部がほとんど痛まない場合には、前腕からのギプスシーネで固定しています。一方、回内・回外によって骨折部が強く痛む場合には、前腕の回旋を抑える目的で、サンドイッチシーネを使って肘上から固定しています。

もちろん、骨折の転位や不安定性、腫れの程度なども考慮する必要があります。

最終的な骨癒合や手関節機能に差がないとしても、治療中の痛みまで同じとは限りません。

「短腕固定と長腕固定のどちらが優れているか」と考えるよりも、骨折の状態に加えて、患者さんが前腕を回旋したときにどの程度痛むのかをみながら、固定範囲を選択するのが合理的ではないかと考えています。

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