骨折手術中の医原性神経・血管損傷と、肩関節脱臼整復時の注意点

骨折手術中に、動脈や神経を医原性に損傷してしまうことは、まれではありますが起こり得ます。その場合、損傷した動脈や神経を縫合・修復したとしても、その修復術を別に算定できるかという問題があります。

ケースバイケースではありますが、手術操作に伴って生じた医原性損傷の修復については、原則として元の手術に含まれると判断され、別途の縫合術としての算定は認められにくいのではないかと思います。一方で、実際には別に算定している医療機関もあるかもしれませんので、このあたりは審査上の取り扱いを確認してみたいところです。

医原性損傷という点では、肩関節脱臼の整復にも注意が必要です。

「脱臼整復操作により骨折の医原性転位を起した肩関節脱臼骨折の1例」という報告があります。

https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15106/J00764.2004128384

肩関節脱臼に上腕骨近位端骨折を合併している場合には、通常の徒手整復を安易に行うと、骨折部をさらに転位させたり、血管・神経損傷を起こしたりする危険があります。

特に、
・大きく転位した大結節骨折
・上腕骨外科頸骨折
・2-part以上の上腕骨近位端骨折
・長期間経過した陳旧性脱臼

などでは、通常の徒手整復をそのまま行うのではなく、整形外科的に慎重な判断が必要です。場合によっては、透視下や全身麻酔下での整復、あるいは観血的整復を検討することになります。

医原性の骨折転位や神経・血管損傷を生じた場合、単に診療報酬上の問題だけではなく、患者・家族への説明や、その後の紛争につながる可能性もあります。

「整復できるか」だけでなく、「この脱臼は通常の徒手整復をしてよいタイプなのか」を最初に見極めることが重要だと思います。

なお、「禁忌」と言い切るより、「通常の徒手整復を安易に行うべきではない」「慎重な整復が必要」としておく方が医学的には安全です。骨折型や転位量、年齢、陳旧性などで対応が変わるためです。

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