本日、右の肋骨痛があった患者さんから、「足の裏のつぼを押したら痛みが治ったのですが、何か関係があるのでしょうか」と質問されました。
足裏の特定の部位と右肋骨が、解剖学的に直接つながっているとは考えにくいため、「この足裏のつぼを押せば右肋骨痛が治る」と説明することはできません。たまたま痛みが軽くなった可能性もあります。
ただし、身体の離れた場所に刺激を加えることで、もともとの痛みが一時的に弱くなること自体は、医学的にあり得ない現象ではありません。
ちょうど本田先生から、「痛いの痛いの飛んでけー」は本当に効いていた可能性がある、という九州大学の動物実験の記事をご紹介いただきました。痛い場所そのものに触れたり、やさしく刺激したりすることで、その場所の痛みが軽くなる仕組みが研究されています。
一方、「足裏を押したら肋骨の痛みが軽くなった」という現象は、少し別に考える必要があります。
その説明の一つとして考えられるのが、「条件性疼痛調節(conditioned pain modulation)」です。身体のある場所に比較的強い刺激が加わると、脳幹から脊髄へ痛みを抑える仕組みが働き、別の場所の痛みまで弱くなることがあります。簡単にいえば、「別の痛みや強い刺激が、もともとの痛みを抑える」現象です。
そのほかにも、注意が肋骨から足裏へ移ったこと、姿勢や筋緊張が変化したこと、「押せば良くなるかもしれない」という期待による鎮痛、あるいは痛みそのものの自然な変動なども関係している可能性があります。
したがって、「足裏のつぼが右肋骨の病気を治した」とまでは言えません。しかし、「押した直後に痛みが軽くなった」という患者さんの体験そのものを、単なる気のせいとして否定する必要もないと思います。
痛い場所に触れることで痛みが和らぐ場合と、離れた場所への刺激で痛みが和らぐ場合では、似ているようで仕組みは少し異なります。
「痛いの痛いの飛んでけ」も、「足裏を押したら肋骨痛が消えた」も、単なる迷信や気のせいと片づけるのではなく、人間にもともと備わっている疼痛抑制の仕組みを考えるうえで、なかなか興味深い現象なのかもしれません。

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