もう30年以上前だったと思いますが、慶應義塾大学の冨士川恭輔先生(当時はすでに防衛医科大学校教授だったかもしれません)が講演で、「もう膝内障という病名はやめよう」と話されていたことを覚えています。
「膝内障」は、膝関節内に何らかの障害があることを示す包括的な名称で、病態を明確に表した診断名ではありません。かつては半月板損傷、十字靱帯損傷、膝蓋大腿関節の障害など、単純X線では分からない膝関節内のさまざまな病変を含む言葉として使われていました。
日本医事新報の記事には、少し言い過ぎかとも思いますが、「もともと関節内で何か障害が生じている意味で『内障』という言葉が使われた。MRIが半月板断裂など関節内病変を描出するようになったことで、『膝内障』という診断名が廃語になった」と書かれています。
確かに、MRIをはじめとする画像診断の進歩によって、半月板損傷、軟骨損傷、靱帯損傷、遊離体、変形性膝関節症などを、以前より具体的に診断できるようになりました。「膝内障」という包括的な病名を使う必要性は、以前よりかなり少なくなっていると思います。
膝内障という病名で湿布を処方する程度なら、まだ実害は少ないかもしれません。しかし、「膝内障」という曖昧な病名のまま運動器リハビリテーションを行うとなると、何を治療対象とし、どの機能障害を改善しようとしているのかが分かりにくくなります。
特に50歳代の患者さんに「膝内障」という病名がついているのを見ると、変形性膝関節症とは違うのか、半月板損傷なのか、膝蓋大腿関節の障害なのか、それとも単に膝痛に対するレセプト病名なのか、と思ってしまいます。
もちろん、初診時には確定診断に至らず、暫定的な病名が必要なこともあります。しかし、診察や画像検査によって病態が明らかになってきた時点で、できる限り原疾患を明らかにし、病名も見直すべきではないでしょうか。
病名は単なる請求上の符号ではありません。患者さんに自分の膝で何が起きているのかを説明し、治療方針を共有するためのものでもあります。
あれから30年以上。そろそろ「膝内障」という病名をやめる時期ではないでしょうか。

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