股関節疾患で殿部痛を訴える割合は?―お尻の痛みは腰だけが原因ではない

お尻(殿部)が痛いと、腰が原因だと思う方が多いのではないでしょうか。実際、腰椎疾患によって殿部痛が生じることはよくあります。しかし、股関節疾患でも殿部痛を訴えることがあり、必ずしも腰が原因とは限りません。

では、股関節疾患の患者さんのうち、どのくらいの割合で殿部痛が認められるのでしょうか。

変形性股関節症では約4~5割に殿部痛がある

2009年に日本で報告された研究では、人工股関節置換術を受けた変形性股関節症138股について、痛みの部位を調査しています。

その結果は次のとおりでした。

痛みの部位割合
鼠径部(足の付け根の前側)67%
股関節外側61%
殿部(お尻)54%
大腿部16%
下腿部7%

複数の部位に痛みを訴えた患者さんも含まれています。

また、2016年に発表された海外の研究では、変形性股関節症108例について、以下の結果が報告されています。

痛みの部位割合
大転子部(股関節の外側)77%
鼠径部53%
大腿前面・外側42%
殿部38%
膝17%
下腿15%

このように、研究対象によって差はありますが、変形性股関節症では約38~54%に殿部痛が認められています。

つまり、股関節疾患でお尻が痛くなることは、決して珍しいことではありません。

ただし、これらは変形性股関節症についての数字であり、すべての股関節疾患に当てはまるわけではありません。

殿部だけが痛い患者さんは少ない

ここで重要なのは、殿部痛があることと、殿部だけが痛いことは違うという点です。

2016年の108例を対象とした研究では、殿部痛を訴えた患者さんは38%でしたが、殿部だけに痛みが限局していた患者さんは全体の約1~2%でした。

つまり、股関節疾患で殿部痛を訴える患者さんの多くは、鼠径部や股関節外側など、ほかの部位にも痛みがあったことになります。

ただし、殿部だけが痛いからといって、股関節疾患を完全に否定することはできません。

また、日本の研究では、変形性股関節症の患者さんの33%が鼠径部痛を訴えていませんでした。股関節疾患だから必ず足の付け根が痛くなるというわけでもありません。

腰椎疾患との鑑別には股関節の可動域が重要

殿部痛を訴える患者さんでは、腰椎疾患と股関節疾患の両方を考える必要があります。

その際に重要なのが股関節の可動域です。

特に確認したいのは、股関節を内側にひねる内旋運動です。

変形性股関節症では、股関節の内旋制限が認められることが多く、内旋時に痛みが誘発されることもあります。

2019年に発表されたシステマティックレビューでは、股関節内旋制限の陽性尤度比は3.2、内転制限では4.2と報告されています。

一方、内旋時の痛みだけでは診断の特異性が十分ではありません。痛みの有無だけでなく、可動域制限やほかの診察所見と合わせて判断することが大切です。

また、股関節の可動域が正常でも、初期の股関節疾患を完全に否定できるわけではありません。

股関節のレントゲン撮影も有用

殿部痛を訴える患者さんでは、症状や診察所見に応じて股関節の単純X線撮影を行うことも重要です。

特に中高年では、変形性股関節症や臼蓋形成不全などが見つかることがあります。

ただし、単純X線撮影にも限界があります。

初期の変形性股関節症では、関節裂隙の狭小化や骨棘形成などが明らかでないことがあります。また、大腿骨頭壊死症や大腿骨頸部の不顕性骨折なども、初期には単純X線で異常が認められない場合があります。

診察所見からこれらの疾患が疑われる場合には、MRIなどの追加検査を検討します。

反対に、レントゲンで変形性股関節症が見つかっても、それが殿部痛の原因とは限りません。腰椎疾患と股関節疾患が併存している場合もあります。

まとめ

変形性股関節症では、約4~5割の患者さんが殿部痛を訴えると報告されています。

しかし、殿部だけに痛みが限局する患者さんは少数です。

したがって、お尻が痛いというだけで腰椎疾患と決めつけるのは適切ではありません。

股関節の可動域、特に内旋制限や内旋時の疼痛を確認し、必要に応じて股関節の単純X線撮影を行うことが大切です。

ただし、初期の股関節疾患では可動域制限やX線異常が明らかでないこともあり、症状が続く場合には再評価が必要です。

お尻の痛みは、腰だけでなく股関節が原因となっていることもあるのです。

参考文献

  1. 「変形性股関節症における股関節痛の検討:疼痛領域の多様性」臨床整形外科.2009;44(12).
    https://doi.org/10.11477/mf.1408101637
  2. Poulsen E, et al. Pain distribution in primary care patients with hip osteoarthritis. 2016.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27538424/
  3. Metcalfe D, et al. Does This Patient Have Hip Osteoarthritis? The Rational Clinical Examination Systematic Review. JAMA. 2019.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31846019/

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