2026年5月、医学雑誌「The BMJ」に、カルシウムやビタミンDのサプリメントには骨折や転倒を予防する効果がほとんどない、という研究結果が発表されました。
69件の臨床試験、約15万4千人を対象とした大規模な研究です。
これだけを読むと、「カルシウムやビタミンDを摂取しても意味がないのか」と思われるかもしれません。しかし、私はこの結果をそのように解釈するのは適切ではないと思います。
カルシウムとビタミンDは骨に不可欠
骨の主要な成分はカルシウムとリン酸からなるハイドロキシアパタイトです。また、ビタミンDは腸管からのカルシウム吸収などに重要な役割を果たしています。
カルシウムやビタミンDが不足すれば、骨の健康に悪影響を及ぼします。特にビタミンDの著しい欠乏は骨軟化症の原因にもなります。
今回の研究は、カルシウムやビタミンDという栄養素そのものが不要だと証明したわけではありません。
サプリメントを追加しても骨折は減らない?
今回の研究では、カルシウム単独、ビタミンD単独、両者の併用について、骨折や転倒の予防効果を検討しています。
その結果、カルシウム単独とビタミンD単独では、骨折を減らす明確な効果は認められませんでした。
カルシウムとビタミンDの併用では骨折が約9%減少しましたが、絶対的な減少は約1%にとどまり、研究者らは臨床的な意義が小さいと判断しています。
ただし、この研究では骨粗鬆症の薬物治療を受けている人は対象から除外されています。また、参加者の多くは地域で生活する、骨折リスクが比較的高くない人たちでした。
したがって、この結果を骨粗鬆症患者全体に当てはめることはできません。
また、食事から摂取するカルシウムと、サプリメントとして追加するカルシウムも区別する必要があります。
もっとも、食事からのカルシウム摂取量を増やせば骨折が減るという明確な証拠も、現時点では十分ではありません。
身体に悪い食事を続けたままでよいのか?
私は、健康を考える際に「足し算健康法」だけでなく、「引き算健康法」が重要だと考えています。
身体に悪い食生活を続けたまま、サプリメントなど身体に良いとされるものを追加するだけで、十分な効果が得られるのでしょうか。
例えば、加工食品には保存性や食感などを改善する目的で、無機リン酸塩が添加されているものがあります。
リンはカルシウムとともに骨を構成する重要な元素ですが、無機リン酸塩を過剰に摂取すると、骨代謝に関係するホルモンなどに悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
ただし、無機リン酸塩の摂取が実際に骨折を増やすのか、あるいはカルシウムの骨折予防効果を打ち消しているのかについては、まだ十分に証明されていません。
それでも、栄養バランスの偏った食生活をそのままにして、サプリメントを追加するだけで健康を維持しようとする考え方には疑問があります。
まず、過剰な塩分や飲酒、栄養バランスの偏りなど、健康に悪影響を及ぼす食習慣を見直すことが大切です。
身体に良いものを追加する「足し算健康法」だけでなく、身体に悪い習慣を減らす「引き算健康法」も重要だと思います。
骨折予防には運動も重要
骨折を予防するには、骨の強さだけでなく、転倒を防ぐことも重要です。
高齢になると、筋力やバランス能力が低下し、転倒しやすくなります。骨密度がそれほど低くなくても、転倒によって骨折することがあります。
そのため、片脚立ちや椅子からの立ち上がりなどのロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、転倒予防の観点から重要です。
ただし、運動による転倒予防と、カルシウムやビタミンDによる骨代謝への作用は別のものです。
運動をすればカルシウムやビタミンDが不要になるわけではありません。
まとめ
今回の研究で明らかになったのは、一般的な成人、特に骨折リスクが比較的低い高齢者にカルシウムやビタミンDのサプリメントを追加しても、骨折予防効果は小さいということです。
カルシウムやビタミンDそのものに意味がないということではありません。
骨折予防には、適切な栄養摂取、食生活の改善、運動による転倒予防、そして必要に応じた骨粗鬆症の薬物治療を組み合わせることが重要です。
身体に良いものを追加することばかり考えるのではなく、まず身体に悪い生活習慣を減らす「引き算健康法」にも目を向けるべきではないでしょうか。
なお、医師から処方されているカルシウム製剤や活性型ビタミンD製剤などは、今回の研究を理由に自己判断で中止しないでください。
参考文献
- Massé O, et al. Calcium, vitamin D, or combined supplementation to prevent fractures and falls: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2026;393.
- Bolland MJ, et al. Calcium intake and risk of fracture: systematic review. BMJ. 2015;351.

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