MRIを撮るだけで腰痛が軽くなる?―「MRI浴」はあるのか

「MRIを撮ると腰痛が軽くなる」

そんな話を聞くことがあります。

もちろんMRIは検査装置であって、腰痛の治療器ではありません。

それでも、もし本当にMRI検査の後に腰痛が軽くなる人がいるとしたら、何が起きているのでしょうか。

まず考えられるのが「安心による効果」です。

腰が痛いと、「椎間板ヘルニアではないか」「何か悪い病気があるのではないか」と不安になります。

MRIを撮影して重大な病気がないことが分かり、「心配するような所見ではありません」と説明されれば、不安が軽くなります。

そして不安が軽くなることで、痛みそのものが軽く感じられる可能性があります。

実際、腰痛ではMRI所見の伝え方によって、その後の痛みや機能、病気に対する認識が変わることが報告されています。

MRIでみられる変化を単に「椎間板変性があります」などと伝えるのではなく、「よくみられる加齢性変化で、心配の少ない所見です」と説明することで、患者さんの不安が減り、その後の経過にも良い影響を与える可能性があります。

反対に、MRIで見つかった変化を必要以上に強調すると、「自分の腰はかなり悪い」「動いたらもっと壊れるのではないか」と考えてしまい、痛みへの不安や恐怖を強めることがあります。

これはMRIそのものの治療効果ではなく、「MRIの結果をどのように受け止めたか」による効果です。

ところが、さらに面白い話があります。

MRIの結果を医師から聞く前、つまり検査が終わった時点ですでに腰痛が軽くなっている人がいるとしたらどうでしょうか。

これでは「悪い病気ではないと分かって安心したから」という説明だけでは足りません。

本当に「MRI浴」のような効果があるのでしょうか。

一つ考えられるのは、検査そのものに対する期待です。

「これで原因が分かる」
「ようやく詳しく調べてもらえる」
「これで治療が前に進む」

そう思って専門的な検査を受けること自体が安心感につながり、痛みの感じ方に影響する可能性があります。

いわゆるプラシーボ効果も、単なる「気のせい」ではありません。

治療や検査への期待、医療者との関係、不安の軽減などによって、脳で行われる痛みの処理が変化することがあります。

もう一つ、もっと単純な理由も考えられます。

MRI検査では、20~30分程度、仰向けになってほとんど動かずにいます。

立ったり歩いたりしていると痛む腰痛であれば、しばらく横になっているだけでも腰への負担が減り、一時的に症状が軽くなることがあります。

では、MRIの強い磁石そのものに鎮痛作用があるのでしょうか。

MRIでは1.5Tや3Tという非常に強い静磁場を使用します。

しかし、静磁場への曝露によって痛覚が明らかに低下することを示す確かな臨床的根拠は、現在のところ乏しいようです。

強い磁場が血流や微小循環などに何らかの影響を与える可能性については研究されていますが、

「MRIに入ると腰のうっ血が改善し、そのため腰痛が軽くなる」

というような機序が臨床的に証明されているわけではありません。

したがって、MRI後に腰痛が軽くなったとしても、現時点では磁場そのものの効果と考えるより、

検査を受けたことによる安心や期待
検査中にしばらく安静にしていたこと
痛みそのものの自然な変動

などをまず考える方が自然でしょう。

それでも、興味深い疑問は残ります。

平均すると磁場による鎮痛効果が認められなかったとしても、「MRIに入るとなぜか毎回痛みが軽くなる」という人が本当にいるのなら、それは何によるのでしょうか。

MRIは診断装置ですので、もちろん腰痛治療のために入るものではありません。

しかし、「MRIを撮ったら痛みが軽くなった」という現象を詳しく調べてみると、痛みが単純に腰だけで生まれているものではなく、安心、不安、期待、姿勢、環境など、さまざまな要素によって変化することがよく分かります。

「MRI浴」という治療があるわけではありませんが、もしMRI後に腰痛が軽くなる人がいるのなら、その理由を考えてみるのは意外に面白い問題です。

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