趾骨癒合症

足趾をぶつけて受診した患者さんのレントゲンを撮ると、時々「趾節癒合」が見つかります。

多くの患者さんは、それまで自分の足趾の骨が癒合していることを知りません。ケガをして初めてレントゲンを撮り、「小趾の骨が2個しかありませんね」と説明されて気づくことになります。

趾節癒合は病気というより、かなり頻度の高い解剖学的なバリエーションです。

第5趾では骨が3個ではなく2個の人が多い

通常、第2~5趾には基節骨、中節骨、末節骨の3個の骨があります。

ところが趾節癒合では、中節骨と末節骨に相当する部分が一体となり、趾骨が2個しかありません。

特に第5趾で多く、日本人488足を調べた研究では、

・第5趾 72.5%
・第4趾 11.9%
・第3趾 0.8%
・第2趾 0%

に趾節癒合が認められました。別の日本人集団についても、第5趾では約75%と報告されています。欧米では第5趾の2趾節型はおおむね35~45%程度とされ、日本人ではかなり高頻度です。

つまり、日本人では「小趾の骨が3個ある人」の方が少数派ということになります。

本当に「骨が癒合した」のか?

「趾節癒合」という名前から、もともと別々だった中節骨と末節骨が後から癒合したように思えます。

しかし、発生学的には必ずしも単純な「癒合」ではなく、胎児期から分節が十分に分かれず、2個の趾骨として形成された正常変異と考える説があります。実際、胎児期から認められることが報告されています。

英語では biphalangeal toe や symphalangism と呼ばれます。

趾節癒合があると骨折しやすい?

日常診療をしていると、趾節癒合のある患者さんは、何となく足趾を骨折しやすいような印象があります。

調べてみると、この印象を裏付ける日本の研究がありました。

杏林大学の研究では、成人1,402足を調査し、趾節癒合と足趾骨折との関係を検討しています。

足趾骨折215足のうち、第5趾末節骨骨折が62足と最も多く、その62足中60足、96.8%に趾節癒合が認められました。

研究者は、第5趾の趾節癒合がある場合には末節骨骨折が有意に多く、趾節癒合が骨折発生の一因となっている可能性を指摘しています。

したがって、「趾節癒合があると骨折しやすい気がする」というのは、単なる印象だけではなさそうです。

骨折すると治りにくいこともある

さらに最近では、趾節癒合部の骨折は、通常の足趾骨折より骨癒合に時間がかかる可能性も報告されています。

2024年の14例の症例シリーズでは、第4・第5趾の趾節癒合部骨折を保存的に治療したところ、最終的には全例で骨癒合しましたが、画像上の完全な骨癒合までの中央値は5.5か月、平均9.1か月でした。

症例数が少ないので一般化はできませんが、通常の足趾骨折に比べて疼痛やレントゲン上の骨折線が長く残ることがある、という点は知っておいてよいでしょう。

骨折線と関節を間違えないことも重要

趾節癒合があると、本来あるはずの遠位趾節間関節がありません。

そのため外傷後のレントゲンでは、正常な解剖を知らないと、骨折線を関節裂隙と誤認したり、逆に正常構造を骨折と考えたりする可能性があります。趾節癒合を伴う第5趾骨折が診断上の落とし穴になるという報告もあります。

したがって、レントゲンだけを見るのではなく、実際の圧痛部位と一致しているかを確認することが大切です。

趾節癒合そのものには治療は必要ない

趾節癒合は先天的な解剖学的変異であり、それだけで症状がなければ治療する必要はありません。

ほとんどの人は一生気づかずに過ごします。

問題になるのは外傷を受けた場合です。強い圧痛があり、レントゲンで骨折が疑われれば、通常の足趾骨折と同様に固定などの治療を行います。

私自身も、足趾外傷のレントゲンを撮って初めて趾節癒合に気づく患者さんを何人も経験しています。

日本人では特に第5趾で非常に多い正常変異ですが、「ありふれているから臨床的に意味がない」というわけでもなく、骨折のしやすさや治癒経過にも関係している可能性がある、なかなか興味深い所見です。

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