ばね指について、「簡単な手術をすればすぐ治る」と聞くことがあります。
確かに、ばね指の手術は比較的小さな手術です。
指を曲げる腱の通り道で狭くなっているA1 pulley(腱鞘の一部)を切開して腱の通りをよくするもので、弾発現象(カクッと引っかかる症状)をなくす効果は非常に高い治療です。
手術成績についての報告でも、多くの患者さんで弾発現象が消失します。
そのため、「ばね指の手術は成功率が高い」と説明されることがあります。
しかし、ここで一つ注意が必要です。
「弾発現象がなくなった」ことと、「指が完全に元通りになり、何の症状もなくなった」ことは同じではありません。
2026年に報告された前向き多施設研究では、ばね指の手術を受けた患者さんについて、術後6週間、痛み、こわばり、弾発現象がいつ消失するかを毎日調べています。
その結果、弾発現象はほとんどの患者さんで消失しました。
一方、術後6週の時点ですべての症状が完全に消失していたのは64%でした。
23%にはまだ痛みがあり、33%にはこわばりが残っていました。
もちろん、これは「手術が失敗した」という意味ではありません。
痛みが消失するまでの日数の中央値は11日、こわばりは12日で、多くの患者さんは順調に改善しています。
しかし、人によっては回復にもう少し時間がかかるということです。
したがって、
「手術成功率が非常に高い」
=
「手術をすればすぐに完全無症状になる」
ではありません。
この違いは、手術を考えるうえで意外に重要だと思います。
また、ばね指には手術以外の治療法もあります。
症状が軽ければ自然に改善することもありますし、装具によって腱を休ませる方法もあります。
ステロイド注射も代表的な治療法で、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。
一方、症状が強い場合、指がロックして伸びにくい場合、保存療法を行っても改善しない場合、いったん改善しても何度も再発する場合などには、手術が有力な選択肢になります。
手術は、ばね指に対して非常に有効で、確実性の高い治療です。
しかし、
「簡単な手術だから、早く手術をしてしまった方がよい」
とすべての患者さんにいえるわけではありません。
手術には手術の利点があり、保存療法には保存療法の利点があります。
特に治療を始めたばかりであれば、症状の程度や経過をみながら、装具療法やステロイド注射などを試してから手術を考えることもできます。
大切なのは、「手術をするか、しないか」の二者択一ではなく、それぞれの治療法で何が期待でき、何が期待できないのかを理解して治療法を選ぶことだと思います。

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