仕事中や通勤途中にけがをした場合、原則として労災保険(労働者災害補償保険)の対象になります。
しかし、実際の診療では、労災に該当するかどうか、その場では判断できない場合があります。
例えば、会社が労災と認めていない場合、仕事との関連性がはっきりしない場合、通勤災害に該当するか疑問がある場合などです。
このような場合、医療機関ではどのように会計すべきでしょうか。
労災かどうかわからないから、とりあえず健康保険は間違い
労災が疑われるにもかかわらず、判断がつかないという理由だけで、一時的に健康保険を使用することは適切ではありません。
業務災害や通勤災害については、健康保険と労災保険を患者さんや会社が自由に選択することはできません。
また、会社が「労災にしないでほしい」「健康保険を使ってほしい」と希望しても、それによって健康保険が使用できるわけではありません。
労災に該当するかどうかは、最終的には労働基準監督署が判断します。
労災かどうか不明な場合の正しい会計方法
労災の可能性があり、健康保険の適用を判断できない場合は、次のように対応します。
- 受傷した日時、場所、状況、業務や通勤との関連性を確認します。
- 労災の可能性が高い場合は、健康保険での請求を行わず、労災保険の手続きを案内します。
- 労災の書類がまだ提出されていない場合は、医療機関の運用に応じて会計を保留するか、いったん全額を自費でお支払いいただきます。
- 後日、労災保険の対象と認められた場合は、必要な手続きを行って精算します。
- 労災保険の対象外と判断された場合は、健康保険の給付要件を確認したうえで、健康保険への切り替えや精算を行います。
なお、いったん全額をお支払いいただく場合の金額は、医療機関の料金設定や労災診療費の取扱いによって異なります。健康保険の診療報酬の10割相当額と必ずしも同じではありません。
労災の書類がないと受診できない?
労災の書類がまだ用意できていなくても、診療を受けることはできます。
労災指定医療機関では、業務災害の場合は原則として様式第5号、通勤災害の場合は様式第16号の3を提出します。
書類が後日提出される場合の会計方法は、受診する医療機関に確認してください。
健康保険で受診した後に労災と判明した場合
すでに健康保険で受診してしまった場合には、健康保険から労災保険への切り替えが必要です。
医療機関で請求の切り替えができる場合と、患者さんが健康保険の保険者へ医療費を返還したうえで労災保険に請求する場合があります。
健康保険で支払った3割の自己負担分だけでなく、保険者が負担した7割分についても精算が必要になることがあります。
このため、最初から正しい保険制度で手続きを進めることが大切です。
労災かどうかは誰が決める?
労災保険の支給・不支給を判断するのは労働基準監督署です。
会社が労災と認めない場合でも、患者さん本人が労災保険の請求を行うことは可能です。
反対に、会社が労災だと説明していても、必ず認定されるとは限りません。
判断が難しい場合は、勤務先や労働基準監督署に確認してください。
まとめ
労災かどうかわからない場合に、安易に健康保険を使用することは避けるべきです。
業務災害・通勤災害の可能性がある場合は、まず受傷状況を確認し、労災保険の手続きを進めることが原則です。
健康保険の適用が確認できない場合は、医療機関で会計を保留するか、いったん自費で精算し、後日適切な制度に切り替える方法があります。
最初から正しく対応することで、患者さんも医療機関も、後日の複雑な返還手続きを避けることができます。
参考資料
※本記事は一般的な制度の説明です。個別の事案については、労働基準監督署や加入する健康保険の保険者にご確認ください。

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