昔は裸足の民族には外反母趾がほとんどなかったのに、なぜ今は違うのか?

外反母趾は靴、特に先の細い靴やハイヒールとの関係がよく知られています。実際、1965年のBMJの論文では、それ以前の裸足集団の報告をまとめ、ナイジェリア人では外反母趾角が15度を超える人は約3%、香港の中国人では裸足群の外反母趾が1.9%だったのに対し、靴を履く群では30%だったと紹介されています。昔の研究を見ると、「裸足なら外反母趾はほとんど起こらない」と考えたくなります。

ところが、2026年に南アフリカとベルギーの60歳以上300人を比較した研究では、南アフリカ群の方が生涯を通じて裸足で過ごす時間が長かったにもかかわらず、外反母趾の有病率は南アフリカ31.6%、ベルギー27.6%で、ほとんど差がありませんでした。女性では35.4%、男性では17.0%で、年齢が高いほど頻度、重症度とも増加していました。

なぜ昔と今でこんなに違うのでしょうか。

一つは、「裸足集団」の意味が違うことだと思います。昔の研究対象は、幼少期から成人まで西洋式の靴をほとんど履かない集団でした。一方、現在の南アフリカでは裸足で過ごす時間が長くても、学校や仕事、外出などでは靴を履きます。若い時期に先の細い靴を履く機会があれば、その影響が残る可能性があります。2026年の研究でも、南アフリカ群はベルギー群より裸足時間は長かったものの、「一生ほぼ裸足」という集団ではありませんでした。

もう一つは、今回の対象が60歳以上だったことです。外反母趾は靴だけで決まる病気ではなく、女性、加齢、遺伝的素因、足の形など複数の要因が関係します。実際、マサイ族と韓国人女性を比較した研究でも、外反母趾は韓国人女性に多かったものの、マサイ族にも他の足部変形は認められており、裸足であればすべて正常な足になるわけではありません。

したがって、最近の研究から「靴は外反母趾と関係ない」と結論するのは早計だと思います。むしろ、「裸足か靴か」という二分法では不十分で、何歳から、どのような形の靴を、どのくらい長く履いたかを見る必要があるのでしょう。

昔の「裸足民族には外反母趾が少ない」という観察は、今でも重要です。ただ、現代では裸足文化のある地域でも西洋式の靴を履く機会が増え、さらに高齢者を対象とすると、加齢や遺伝など他の要因も積み重なります。そのため、昔ほど単純な差が見えなくなってきたのではないかと思います。

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