30代男性。業務中、車両の後部扉を閉めようとして力を入れた際に左肩を痛めて受診しました。左肩関節脱臼の既往があり、診察時にはすでに整復されていました。単純X線ではHill-Sachs lesionを認めました。
25歳のときに左肩関節脱臼の既往がありました。待合室で待っている間に「はまった感じがした」とのことで、診察時には脱臼は認めませんでした。単純X線ではHill-Sachs lesionを認め、肩関節脱臼後と考え、三角巾固定と投薬を行いました。
後日、本人から「労災が不受理になった」と電話がありました。
「不受理」という言葉がよく分からなかったため会社へ確認したところ、労働基準監督署から「日常生活動作と考えられるので、このままでは労災として通らない」と説明され、申請を取り下げるよう会社へ連絡があったとのことでした。
しかし、今回の受傷動作は、会社の軽バンの高い位置にあるトランクを閉めようとして力を入れた際に生じたものです。少なくとも、単純に「日常生活動作だから業務とは関係ない」と整理してよいのか、私は疑問に感じました。
そのため会社の総務担当者には、「軽バンのトランクを閉めるという業務中の動作で発症しているので、もう一度労働基準監督署に確認してみてはどうか」とお伝えしました。
その後、当院には特に連絡がなく、最終的には健康保険を使用して診療することになりました。
厚生労働省の説明では、労災保険給付については、労働基準監督署に請求書が提出された後、必要な調査が行われ、支給・不支給が決定されます。正式に不支給決定がなされた場合には、労災保険審査官への審査請求という不服申立ての制度もあります。
今回、私が今ひとつ納得できなかったのは、正式な不支給決定ではなく、その前段階で「このままでは通らないので取り下げてはどうか」という形になっていた点です。
もちろん、既往に肩関節脱臼があり、今回の受傷との因果関係をどう評価するかは別の問題です。しかし、業務中に具体的な動作を契機として症状が出現したのであれば、少なくとも申請を受け付けたうえで、業務との因果関係を調査し、支給・不支給を正式に判断するという方法もあったのではないかと思います。
労災に該当するかどうかを最終的に判断するのは医療機関でも会社でもなく、労働基準監督署です。

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