医師と患者は人間的には対等だが、診察室では医師が上?

医師と患者は、一人の人間としてはもちろん対等です。医師だから偉いわけでも、患者だから下ということでもありません。

しかし、診察室の中でも医師と患者がまったく同じ立場かというと、私は少し違うと思っています。

時々、「お金を払っているのだから自分は客だ」というような態度をとる患者さんがいます。しかし、そもそも保険診療は一般の商品やサービスの売買とはかなり違います。

患者さんが窓口で支払っているのは医療費の一部負担金で、現役世代でも原則3割です。残りは健康保険から支払われ、その財源は保険料や公費などで成り立っています。

しかし、それ以上に重要なのは、医療は「お金を払った人の注文どおりのサービスを提供する」という仕組みではないことです。

たとえば患者さんが「MRIを撮ってほしい」「この薬を出してほしい」「注射をしてほしい」と希望しても、医学的に必要がなければ、医師はそのとおりにする必要はありません。反対に、患者さんが希望していなくても、重大な病気が疑われれば検査や専門医への紹介を勧めることがあります。

これは医師の方が患者さんより偉いからではありません。

医療について専門的な知識を持ち、診断し、治療方針を提示し、その医療行為に責任を負うのが医師だからです。

これは、ある意味では習い事にも似ています。

教わる側がお金を払っていたとしても、だからといって先生と生徒の役割が逆転するわけではありません。生徒が「自分がお金を払っているのだから、私の言うとおりに教えろ」と言い始めれば、教育そのものが成り立たなくなります。

学校でも同じでしょう。授業料を払っているからといって、生徒が教師に「金を払っているのはこちらなのだから、授業の内容も試験の採点も自分の希望どおりにしろ」と要求することはできません。

医療も同じだと思います。

もちろん、昔のような「医者の言うことを黙って聞いていればよい」という医療がよいとは思いません。医師には病状や治療法について十分に説明する義務がありますし、最終的に治療を受けるかどうかを決めるのは患者さんです。患者さんには質問する権利も、治療を断る権利も、別の医師の意見を求める権利もあります。

つまり、医師と患者は人間としては対等です。

しかし、診察室では役割が違います。

患者さんは症状や希望を伝え、医師はそれを十分に聞いたうえで、医学的に何が必要なのかを判断する。そして患者さんに説明し、相談しながら治療方針を決めていく。

その意味では、診療という専門的な場では医師が主導するのが当然だと私は思います。

「患者様だから何でも患者さんの希望どおりにする」のが患者中心の医療ではありません。

患者さんの希望を尊重しながらも、医学的に不適切なことには「できません」、必要のないことには「必要ありません」と言う。それもまた、医師の仕事ではないでしょうか。

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