椎間板内注射は局所注射で算定するのか?

腰椎の椎間板性疼痛に対して、X線透視下に椎間板を穿刺し、局所麻酔薬やステロイドなどを椎間板内へ注入する治療が行われることがあります。

では、この「椎間板内注射」は診療報酬上、何で算定するのが妥当なのでしょうか。

結論からいうと、令和8年度の診療報酬では、通常の治療目的の椎間板内注射に対応する独立した手技点数はありません。

厚生労働省の医療技術評価資料にも、

「現在、椎間板に対するアプローチは椎間板造影が認められているが、椎間板注射については点数化されていない」

と明記されています。さらに、ステロイドや抗菌薬を椎間板内へ注入する手技について「適切な点数がない」とされています。

椎間板造影とは違う

椎間板を穿刺する診療行為として従来から認められているのが椎間板造影です。

椎間板造影は、造影剤を椎間板内へ注入し、椎間板の形態や疼痛誘発などを評価する診断的手技です。

一方、椎間板性腰痛に対して局所麻酔薬やステロイドを注入する場合は、目的が治療です。

したがって、

「椎間板を穿刺したから椎間板造影で算定する」

ということにはなりません。

実際に造影剤を使用して診断目的の椎間板造影を行った場合には、その椎間板造影を算定できますが、治療目的の薬剤注入そのものに独立した手技料が付くわけではありません。

神経ブロックでもない

では、神経根ブロックや腰部傍脊椎神経ブロックとして算定できるのでしょうか。

これも本来は違います。

神経ブロックでは、神経、神経根、神経節などを標的として局所麻酔薬を注入し、神経伝導を遮断します。

これに対して椎間板内注射の標的は、あくまで椎間板そのものです。

したがって、

「透視下で深く刺している」
「神経根の近くを通る」

という理由だけで神経ブロックとして算定するのは、実際に行った手技と請求内容が一致しません。

ヘルニコアは別

同じく椎間板内へ薬剤を注入する治療でも、コンドリアーゼ、いわゆるヘルニコアを使用する場合は別です。

これはK134-4「椎間板内酵素注入療法」として独立して点数化されています。

つまり、

「椎間板に薬剤を入れたからK134-4」

ではありません。

K134-4はコンドリアーゼによる特定の治療を対象としたものです。

局所麻酔薬やステロイドを椎間板内へ注入した場合に、この点数を準用することはできません。

では局所注射ではないのか

ここで最も疑問になるのが、

「それならG000局所注射で算定するのが一番近いのではないか」

という点です。

G000には「局所注射」「病巣内薬剤注入」などがあり、診療行為マスター上も独立した項目として存在しています。

過去の通知でも、局所・病巣内薬剤注射や病巣内薬剤注入などについて、皮下・筋肉内注射に準じて算定する扱いが示されています。

椎間板内注射の実際の内容を考えると、

椎間板という病変局所に針を刺し、
そこへ薬剤を注入する

という手技です。

したがって、既存の診療報酬項目の中から選ぶのであれば、神経ブロックよりもG000局所注射、あるいは病巣内薬剤注入の概念の方が近いと考えるのは自然です。

ただし「椎間板内注射=G000」と明記した通知は見当たらない

ここは重要です。

私が公開資料や診療報酬解説を検索した範囲では、

「椎間板内注射はG000局所注射として算定する」

と明記した厚生労働省通知、疑義解釈、審査情報、あるいは明確な解説サイトは確認できませんでした。

一方、厚生労働省の医療技術評価資料では、治療目的の椎間板注射について、

「点数化されていない」
「適切な点数がない」

と明記されています。

つまり、

「G000で算定してよいことが公式に確認されている」

とは言えません。

それでも局所注射が最も近いと思う理由

治療目的の椎間板内注射を既存項目と比較すると、

神経ブロックではない
椎間板造影でもない
関節腔内注射でもない
トリガーポイント注射でもない
椎間板内酵素注入療法でもない

ことは明らかです。

それに対してG000局所注射は、

「病変局所に薬剤を注入する」

という行為そのものを評価する項目です。

したがって、

「独立した椎間板内注射の点数はないが、既存項目の中ではG000局所注射が最も近い」

という整理は、実務上はかなり合理的だと思います。

ただし、これは明文の算定ルールではなく、あくまで現行点数表の中でどの項目が最も手技の実態に近いかという解釈です。

厚労省資料が「適切な点数がない」としている理由

厚生労働省の医療技術評価資料では、経皮的椎間板内注射について、新たな点数を設ける要望が出されています。

これは当然ともいえます。

椎間板内注射は通常、

X線透視を行い、
目的椎間板を確認し、
神経根や血管を避けながら、
深部の椎間板まで針を進め、
薬剤を注入する

という手技です。

一方、G000局所注射は18点です。

したがって、仮に局所注射として算定したとしても、透視下で椎間板を穿刺する技術的負担を十分に評価した点数とは到底いえません。

厚労省資料の「適切な点数がない」という表現は、

「一切算定できない」

というより、

「この手技に見合った独立した診療報酬上の評価がない」

という意味に読むのが自然でしょう。

トリガーポイント注射としては無理がある

椎間板内注射をトリガーポイント注射として算定するのはさらに無理があります。

トリガーポイント注射は、筋肉などの圧痛点を標的として行う注射です。

椎間板は全く別の組織であり、透視下に深部まで穿刺して椎間板内部へ薬剤を注入する手技です。

したがって、

「腰痛に対する注射だからトリガーポイント注射」

という整理は適切ではありません。

現時点での整理

令和8年度現在、私なら次のように考えます。

診断目的で実際に椎間板造影を行った場合は椎間板造影。

コンドリアーゼを注入した場合はK134-4椎間板内酵素注入療法。

神経根を標的としてブロックした場合は神経根ブロック。

椎間板そのものに局所麻酔薬やステロイドを治療目的で注入した場合は、独立した「椎間板内注射」の点数はない。

そのうえで、既存項目の中ではG000局所注射が最も近いのではないか、と考えます。

ただし、椎間板内注射をG000で算定できると明示した通知等は、私が確認した範囲では見当たりません。

まとめ

腰椎の椎間板性疼痛に対する治療目的の椎間板内注射は、令和8年度の診療報酬では独立して点数化されていません。

厚生労働省自身も、経皮的椎間板内注射について「点数化されていない」「適切な点数がない」としています。

一方、G000には局所注射・病巣内薬剤注入という項目があります。

したがって、

「椎間板内注射としての独立した点数はない。既存項目の中ではG000局所注射が最も近いと考えられるが、これを明示した通知は確認できない」

というのが、現在のところ最も無理のない整理だと思います。

そもそも椎間板内注射には有効性があるのかという問題もあります。椎間板内ステロイド注射は、Modic変化を伴う症例では短期的な疼痛・機能改善が報告されていますが、一般的な椎間板性腰痛に対する効果は明確ではなく、6か月以降の長期効果も乏しいとされています。

本稿は公開されている診療報酬資料をもとにした私見です。個々の症例の算定可否は、実際の診療内容や審査上の取扱いによって判断されます。

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