膝に水がたまったとき、「抜いた方がよいのでしょうか」とよく質問されます。関節液を針で吸引する処置を「関節穿刺」といいます。穿刺には、たまった液を抜いて症状を軽くする目的と、関節液を調べて原因を診断する目的があります。
「何mL以上なら抜く」という一律の基準はなく、初めての水腫なのか、原因は分かっているのか、痛みや動かしにくさがあるのかなどを考えて判断します。
初めての水腫では、原因を調べる意味がある
膝に水がたまる原因は、変形性膝関節症だけではありません。関節リウマチ、偽痛風、感染などでも水腫が生じます。
特に初めて診察する患者さんでは、必要に応じて穿刺を行い、関節液の色や濁り、細胞数、結晶、細菌などを調べることが、原因を見分ける手掛かりになります。関節液だけで関節リウマチを確定できるわけではありませんが、炎症性の関節炎を疑うきっかけになります。
そのため、液量が少ない場合でも、診断のために穿刺する意義があります。急に強く腫れた場合や、熱感・強い痛みがある場合は、感染などを見逃さないことが大切です。
水腫は大腿四頭筋の働きにも影響する
関節水腫は、膝の張りや曲げにくさだけでなく、太ももの前にある大腿四頭筋の働きを抑制することがあります。これを関節原性筋抑制といいます。
実験的には、少量の液体を膝関節内に注入しただけでも筋の抑制が生じることが報告されています。抑制が続くと、十分に力を出せず、筋力訓練の妨げや筋萎縮につながる可能性があります。
ただし、「10mL以上なら必ず萎縮する」という意味ではありません。液量だけでなく、関節内圧や炎症なども関係するため、筋力や筋収縮の状態も含めて判断します。
ヒアルロン酸注射の前には抜いた方がよい?
変形性膝関節症でヒアルロン酸注射を行う場合、関節水腫があれば、先に排液することには治療上の意義があります。
注射前に排液した群と排液しなかった群を比較した研究では、排液した群で痛みや日常生活機能がより改善しました。ただし、患者さんと評価者による総合的な効果判定には、有意な差がありませんでした。
水腫がある場合は排液してから注入することを基本に考えますが、ごく少量の関節液まで毎回積極的に吸引する必要があるかは、別に判断する必要があります。
2回目以降は、毎回抜くとは限らない
すでに原因が分かっており、少量の水腫が残っているだけで、張りや動かしにくさも乏しければ、必ずしも毎回抜く必要はありません。
一方、再び強く張っている、曲げにくい、大腿四頭筋に力が入りにくい、前回の排液で明らかに楽になったといった場合には、再度の穿刺を検討します。前回とは腫れ方や痛みが違う場合には、原因を改めて調べる必要もあります。
また、穿刺はたまった液を取り除く処置であり、水腫を起こす原因そのものを治すとは限りません。原因となる炎症などが続けば再びたまるため、原因に対する治療も必要です。
膝関節水腫では、単に「何mLあるか」だけでなく、診断と治療の両面から穿刺の必要性を考えます。初回は原因を調べる意義を、2回目以降は症状や筋機能、前回の効果を重視して判断することが大切です。

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