成人の肘外傷でfat pad signが陽性なら骨折を疑う?

肘をぶつけたり、転倒して手をついたりしたあとに肘が痛くなり、レントゲンを撮っても明らかな骨折線が見つからないことがあります。

しかし、そのような場合でも、肘関節周囲のfat pad(脂肪体)の位置に変化がみられることがあります。これがfat pad signです。

特に外傷後にfat pad signを認めた場合、「骨折線が見えないから骨折ではない」とは言い切れません。

fat pad signとは

肘関節周囲には脂肪体があり、通常は骨のくぼみに収まっています。

ところが、骨折などによって関節内に血液や関節液がたまると、脂肪体が押し上げられ、単純X線で通常とは異なる位置に見えることがあります。

これがfat pad signです。

単純X線で骨折線が確認できなくても、関節内に何らかの損傷が起きている可能性を示す所見として重要です。

成人では約4分の3に潜在骨折

O’Dwyerらは、急性肘外傷後の単純X線で明らかな骨折線を認めないものの、fat pad signが陽性であった成人20例にMRIを行いました。

その結果、20例中15例、75%に潜在骨折が確認されました。

骨折部位は、

  • 橈骨頭骨折 13例
  • 上腕骨外側上顆骨折 1例
  • 肘頭骨折 1例

であり、大部分が橈骨頭骨折でした。

つまり、成人の肘外傷でfat pad signが陽性の場合、単純X線で骨折線が見えなくても、実際には非転位性の橈骨頭骨折が隠れていることが少なくありません。

骨髄浮腫や靱帯損傷もみられる

同じ研究では、20例中18例、90%に骨髄浮腫を認めました。

さらに、

  • 側副靱帯損傷 3例
  • 関節内遊離体 1例

もMRIで確認されています。

したがって、fat pad signは単に「骨折の有無」だけでなく、肘関節内に何らかの外傷性変化が起きていることを示している場合があります。

fat pad signが大きいほど骨折しやすいわけではない

興味深いのは、fat padの挙上量と潜在骨折の有無との間に、明らかな関連が認められなかったことです。

つまり、

「fat pad signが大きいから骨折している」
「小さいから骨折ではない」

とは判断できません。

重要なのは大きさよりも、外傷後にfat pad signが出現していることそのものです。

MRIを撮れば治療方針は変わるのか

この研究では、MRIによって潜在骨折や靱帯損傷などが判明しましたが、全例で治療方針の変更はありませんでした。

この点も臨床上重要です。

成人の外傷後fat pad sign陽性例では、潜在骨折が高率に存在すると考えて診療すれば、すべての症例にMRIを行わなくてもよい場合があります。

特に、非転位性橈骨頭骨折が疑われる場合には、症状や診察所見をみながら保存的に経過をみることが多くなります。

「骨折線が見えない=骨折ではない」ではない

単純X線は骨折診断に非常に有用ですが、非転位性骨折や微細な骨折では、受傷直後には骨折線がはっきり見えないことがあります。

成人の肘外傷で、

  • 肘に圧痛がある
  • 肘の動きが痛い
  • 前腕の回内・回外で痛みが出る
  • fat pad signが陽性

といった場合には、単純X線で明らかな骨折線がなくても、潜在性橈骨頭骨折を考えて診療する必要があります。

fat pad signは骨折の「感度」を示した研究ではない

この研究は20例と小規模です。

また、fat pad sign陽性例だけを対象にMRIを施行した研究ですので、

「橈骨頭骨折の75%にfat pad signが出る」

という意味ではありません。

あくまで、

「単純X線で骨折線が見えない成人の肘外傷でも、fat pad signが陽性なら、その約4分の3に潜在骨折がみつかった」

という研究です。

この違いは重要です。

まとめ

成人の肘外傷では、単純X線で明らかな骨折線がみえなくても、fat pad signが陽性であれば潜在骨折を疑う必要があります。

O’Dwyerらの研究では、fat pad sign陽性の成人20例中15例、75%にMRIで潜在骨折が確認され、その大部分は橈骨頭骨折でした。

一方、fat pad signの大きさと骨折の有無には明らかな関連はなく、MRIで詳細な損傷が判明しても治療方針は変わりませんでした。

したがって、成人の外傷後fat pad sign陽性例は、たとえ単純X線で骨折線が確認できなくても、臨床的には潜在性橈骨頭骨折を念頭に置いて扱うのが妥当だと思います。

参考文献

O’Dwyer H, et al. The fat pad sign following elbow trauma in adults: its usefulness and reliability in suspecting occult fracture. J Comput Assist Tomogr. 2004;28:562-565.

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