交通事故・労災などのFAQs

警察に届けるかどうかは加害者・被害者の話し合いで決められる?

自動車事故を起こした場合は道路交通法72条によって「必要な措置(負傷者を救護し、道路における危険を防止する等)を講じ、警察へ届け出なければならない」となっていますので、これに違反した場合には罰則規定もあります。

物損事故でも治療は受けられる?

刑事罰や交通違反の点数がつくことを免れるために、一度物損事故としておいて、保険の請求に関してのみ人身事故証明書入手不能理由書を提出しようとする方がおります。また、物損にすることを条件に相手との交渉を有利にしようとされる方もいます。このような方法は不正ですので症状があれば診断書を提出して人身事故扱いにしてください。

人身事故の場合は自動車損害賠償保障法が適応され、加害者が自ら無過失を立証しない限り、加害者に過失があるとされます。
これに対して、物損事故ですと民法709条が適応となり、加害者に故意または過失があったこと、それによって自身の被害が生じたことを被害者側が立証しなければならないのです。

自動車損害賠償保障法は被害者救済のために作られた法律で、人身事故の被害者が損害賠償請求をしやすいような構成になっているのです。
交通事故の被害者が、人身事故を物損扱いにして得することは何もないと言われています。

交通事故と健康保険の関係は?

通勤途中や業務中の交通事故では健康保険は使えません。
健康保険診療と自賠責を用いた自由診療では治療内容に差が出ることがあります。
健康保険を使う場合は、治療費についての損害賠償請求権が健康保険組合に移りますので、注意が必要です。加害者が治療費の一部を支払ったときは、その限度で、健康保険の給付を受けられなくなります。

健康保険診療とは?

必要最低限の治療であり、予防的、美容的考えは認めておらず、湿布や注射、使える薬に制限があります。またリハビリの回数も制限されます。

交通事故の健康保険使用はひき逃げや無保険などで十分な補償を受けられないときの被害者救済のためです。いわば緊急避難的な例外的な適応です。保険会社と、患者さんは利益を得ることもありますが、健康保険には国民の税金も投入(国保では50%程度)されていますので、事故と直接関係のない人々には不利益となることを良くお考え下さい。

健康保険での治療は、患者さんから健康保険を使用したいとの意思表示があってから行いますので、過去に遡っての健康保険への変更は致しかねます。

制限される例
・傷の場合 創傷被覆材の枚数および期間(最高3週間)
・内服の場合 ノイロトロピン、リリカ、サインバルタ、トラムセット、トラマール、筋弛緩剤、漢方薬、ビタミンCやトランサミン、タケキャブなど
・湿布など外用の場合 枚数の制限、ロコアテープ(外傷の適応なし)、ノルスパンテープ(慢性疼痛)
・ブロック注射の場合 ブロックの回数は受傷後1ヶ月より原則週に1回、使用薬剤の量 
・運動器リハビリテーションの場合 リハビリの回数制限、リハビリの期間が受傷後150日越では月に13単位まで、外傷病名によっては適応外
・レントゲン、超音波検査やMRIの場合 回数に制限

健康保険を利用する場合の注意事項?

交通事故に係る診療においては、保険制度の目的等を勘案し、自動車専用の保険を利用するのが患者さんにとって最善であると考えます。
ただし、何らかの理由により、健康保険での診療を患者さん自身が希望される場合には、健康保険証を医療機関窓口に提示することで健康保険による診療が可能になります。(患者さん以外の第三者の都合や意向で健康保険の利用を強要されてはなりません。)

過失割合が70%以上では治療費や慰謝料が20%減額されます。これは法律の趣旨としては、過失が大きくても治療費ぐらいはただになるようにしましょうと言うことです。ですから、健康保険を用いて慰謝料を多くもらおうというのは法の趣旨に反します。

過失割合が70%以上(100%では自賠責保険は使えません)でも、被害額が20万円未満の場合は20%の減額はありません。こういったことは保険会社はまず説明しません。明らかに2~3回の通院で終了しても、健康保険を強要する例があります。

人身傷害補償保険の利用に関する注意事項は?

平成11 年5 月21 日、日本医師会と東京海上火災保険株式会社は、人身傷害補償保険の約款にある努力規定の取り扱いについて、公的保険の使用を強要するものではないとの確約をし、「1.自賠責保険に関わる案件については従来と同様の取り扱いとする。」、「2.その旨の社内徹底を図る。」旨の文書を交わしたという経緯があります。

治療はともかく慰謝料がたくさん必要な場合はメリットがある場合があります。
健康保険による治療の場合は、損保会社所定の書類(診断書*・明細書・後遺障害診断書)を作成する義務は医療機関にはありませんのでご注意ください。
*損保会社指定の診断書は医師法でいう診断書にはあたりません。

自由診療とは?

患者さんにとって納得のいく治療を行うことができます。予防的、美容的考えも認められています。健康保険の適用されない検査、治療、投薬を受けることも可能です。

自分だけでした怪我に比べ、相手のいる事故は病態が複雑になるため、初期だけでも自由診療をした方が良い場合が多いのです。

通常の場合には,「絶対に」自由診療によるべきです。それは,交通事故の場合には当初の検査と治療が非常に重要です。
そして,軽症と思えても,脳損傷があったり,骨折が見過ごされることもあり得ますので,色々制約がある健康保険よりも自由診療を選ぶのは当然です。医療機関としても,健康保険治療としたために,不必要な後遺症を生じさせるよりも自由診療を選ぶはずです。(某法律事務所ホームページより引用)

弁護士なども保険診療と自由診療の違いがわからず、単に慰謝料のみを考えている方がおられます。
治療して良くなるのが一番なのです。後遺症を残して、いくらばかりのお金をもらっても何にもなりません。

交通事故を接骨院で施術する場合の注意事項は?

柔道整復師は医師ではないので、後遺症が残った場合に接骨院の施術だけでは後遺症診断ができません。また、休業に関しても判断できません。そのため、一部の弁護士が月に一回の整形外科受診を勧めていますが、お勧めできません。そもそも、後遺症が残るような症状を柔道整復のみで施術することに問題があります。加害者からすれば、きちんと医療を受ければ完治したのではとの思いが残ります。
また、加害者と治療費でもめた場合に、裁判所は柔道整復師は医師ではないとの理由で施術費用を認めないことがあるので注意が必要です。