ヘバーデン結節とブシャール結節―名前を残した2人の医師

手指の変形性関節症では、DIP関節(指の一番先の関節)にできる結節を「ヘバーデン結節」、PIP関節(二番目の関節)にできる結節を「ブシャール結節」と呼びます。

どちらも病変の形を表した名称ではなく、その名を残したヨーロッパの医師に由来するエポニムです。エポニムとは、人名に由来して付けられた病名や事物、地名、単位などの名称をいいます。

ヘバーデン結節の名は、18世紀英国の内科医William Heberden(1710~1801)に由来します。Heberdenは、指の末節関節に生じる硬い結節を、痛風とは異なる病態として記載しました。その内容は、彼の死後の1802年に刊行された著書『Commentarii de morborum historia et curatione』に収録され、後世にHeberden’s nodes(ヘバーデン結節)と呼ばれるようになりました。

Heberdenはこのほか、狭心症や水痘などの臨床記載でも知られ、英国臨床医学を代表する医師の一人です。

一方、ブシャール結節は、19世紀フランスの内科医・病理学者Charles-Joseph Bouchard(1837~1915)に由来します。BouchardはJean-Martin Charcotに学び、脳出血に関連するCharcot–Bouchard微小動脈瘤の研究をはじめ、感染症、病理学、代謝など幅広い分野で業績を残しました。

PIP関節にみられる結節にはBouchardの名が付けられています。ただしHeberdenの場合と比べると、Bouchard自身がこの病変をいつ、どの文献で最初に詳しく記載したのかは、必ずしも明確ではありません。

現在、患者さんに説明するときには、「一番先の関節がヘバーデン、二番目の関節がブシャール」と説明すれば分かりやすいと思います。

普段何気なく使っている二つの病名ですが、その由来をたどってみると、ヘバーデンは臨床観察を重視した18世紀英国の内科医、ブシャールは幅広い病理学研究を行った19世紀フランスの医師でした。

私たちが毎日の診療で使っている二つの小さな手指結節の名前には、18~19世紀のヨーロッパ医学の歴史が今も残っています。

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