仕事中に同僚や上司とケンカになり、殴られてケガをした場合、労災になるのでしょうか。
「ケンカは個人的な問題だから労災にはならない」と思われることがありますが、必ずしもそうではありません。
厚生労働省は、業務に従事しているときに他人から故意に暴行を受けて負傷した場合について、私的な恨みによるもの、自分から招いた行為によるもの、その他明らかに業務に起因しないものを除き、原則として業務に起因するものと推定するという取扱いを示しています。
つまり、重要なのは「職場で起きたか」だけではなく、なぜ暴行やケンカが起きたのかという点です。
労災になる可能性が高いケース
たとえば、次のような場合です。
・仕事上の指導や注意をきっかけに暴力を受けた
・仕事の進め方、作業手順、役割分担などをめぐる口論から暴行を受けた
・仕事上のミスや勤務態度をめぐるトラブルから暴力を受けた
・同僚同士のケンカを止めようとして負傷した
・仕事中に顧客や取引先から暴力を受けた
・クレーム対応中やカスタマーハラスメントで殴られた
・業務中に強盗などの犯罪に巻き込まれて負傷した
実際の労災審査でも、同僚との間に以前から多少の不満があったとしても、その原因が勤務態度や仕事上の関係にあり、私生活上の恨みではない場合には、業務起因性が認められた例があります。
「仕事中に殴られた」だけでは決まらない
一方で、仕事中に発生したからといって、すべて労災になるわけではありません。
たとえば、
・恋愛関係のもつれ
・個人的な金銭の貸し借り
・仕事とは関係のない昔からの恨み
・私生活上の人間関係
などが原因で暴行を受けた場合には、業務との関係がないため、労災と認められないことがあります。
厚生労働省も、個人的な恨みによって第三者から暴行を受けた場合は、原則として業務災害にはならないとしています。
自分からケンカを仕掛けた場合は?
ここは少し注意が必要です。
厚生労働省の通知では、「自招行為」、つまり本人が自ら招いた暴行についても、業務起因性を否定する理由になり得るとされています。
したがって、仕事上の口論がきっかけだったとしても、自分から積極的に殴りかかったり、著しく相手を挑発した結果としてケンカになった場合には、労災と認められない可能性があります。
逆に、仕事上の口論の途中で一方的に殴られたような場合には、私的な恨みや自招行為がなければ、労災と認められる可能性があります。
休憩時間のケンカは?
休憩時間は少し判断が異なります。
休憩時間中であっても会社の施設内にいるため、事業主の管理下にはありますが、休憩中の行為そのものは原則として私的行為です。
そのため、仕事とはまったく関係のない私的な口論からケンカになった場合には、労災にならない可能性が高くなります。
一方、休憩中であっても、仕事上の問題が原因となって暴行を受けた場合には、事情によっては労災と認められる可能性があります。
最終的に誰が決めるのか
「会社が労災ではないと言ったから、健康保険で受診してください」と言われることがあります。
しかし、労災に該当するかどうかを最終的に決めるのは会社ではありません。
労働者が労災保険給付を請求し、労働基準監督署長が、暴行に至った経緯、業務との関係、私的な恨みの有無、自招行為の有無などを調査して、支給・不支給を決定します。
会社が労災と認めていない場合でも、労災保険の請求をすることはできます。
まとめ
仕事中のケンカによるケガが労災になるかどうかは、「誰が先に殴ったか」だけで決まるものではありません。
重要なのは、その暴行が仕事を原因として起きたものなのか、それとも仕事とは関係のない個人的な事情によるものなのかです。
仕事上の指導、作業方法、勤務態度、顧客対応などが原因で暴行を受けた場合には、労災になる可能性があります。
一方、私的な恨みや金銭問題などが原因の場合や、自分から積極的にケンカを仕掛けた場合には、労災と認められないことがあります。
実際の認定は個々の事情によって異なるため、受診時には「どこで」「誰から」「何が原因で」「どのような経緯で」ケガをしたのかを正確に医療機関へ伝えることが大切です。

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