交通事故後の頚部痛や上肢症状を診察する際、「ジャクソンテスト」という検査名が使われることがあります。
ところが、Jacksonの名前がついた頚部の誘発テストには異なる手技があり、「Jackson test」とだけ記載すると、どの検査を行ったのか分かりにくい場合があります。
『後遺障害等級認定と裁判実務(改訂版、平成29年8月2日)』290頁では、Jackson Test(Jackson Head Compression Test)について、
「頭部を背屈させ、検者は両手で頭部を軽く下方へ押さえる」
検査と説明されています。
これは、頚椎に軸方向の圧迫を加えることによって上肢への放散痛などが誘発されるかをみる検査です。
一方、同書ではJackson Shoulder Depression Test(Shoulder Depression Test)について、
「患者の頭部を一側に傾け、その反対側の肩を押し下げる」
検査として、別に記載されています。
こちらは頭部と肩を反対方向へ動かすことによって、神経根や腕神経叢などの神経組織を伸張し、症状が誘発されるかをみる検査です。
つまり、同じJacksonという名前がついていても、
頭部を下方へ圧迫するJackson Head Compression Test
と、
肩を下方へ押し下げるJackson Shoulder Depression Test
は、手技も症状を誘発する機序も異なります。
したがって、少なくとも『後遺障害等級認定と裁判実務』でいう「Jackson Test」は、Jackson Shoulder Depression Testではなく、Jackson Head Compression Testを指していると理解するのが自然だと思います。
これは後遺障害診断書を記載するときにも注意した方がよい点です。
単に、
「Jackson test(+)」
と記載しただけでは、読む側がどちらの検査を想定するかによって意味が変わる可能性があります。
そのため、
「Jackson head compression test:右上肢への放散痛を誘発」
などと、検査名だけでなく、どのような症状がどちら側に誘発されたのかまで具体的に記載した方が、診察所見としては分かりやすいと思います。
また、これらの誘発テストは、陽性であればそれだけで頚椎神経根障害を証明できる検査ではありません。
症状の分布、知覚障害、筋力、腱反射、MRIなどの画像所見と合わせて判断する必要があります。
交通事故の後遺障害診断書では、検査名を記載すること自体が目的ではありません。
どのような手技で、どちら側に、どのような症状が再現されたのか。
そこまで記載して初めて、診察所見としての意味が明確になるのではないでしょうか。

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