自分で自分を傷つけた場合、健康保険は使えるのでしょうか。
健康保険法では、被保険者が「故意に給付事由を生じさせたとき」は、その傷病について保険給付を行わないとされています。健康保険法第116条にも、その旨が明記されています。
この条文だけを読むと、自傷行為や自殺未遂によるケガは健康保険が使えないようにも見えます。
しかし、実際の取扱いはもう少し異なります。
厚生労働省は2010年、「自殺未遂による傷病に係る保険給付等について」という通知を出し、自殺未遂による傷病について、その発生が精神疾患等に起因するものと認められる場合には、「故意」に給付事由を生じさせたことには当たらず、健康保険の給付対象になるとしています。
さらに、日本医事新報の記事では、厚生労働省の担当者に通知の趣旨を直接確認した際、保険給付の対象とならない「故意の自殺」とは、いわゆる「当たり屋」のような、何らかの利得目的による自傷行為を想定しているとの説明だったとされています。
そのうえで、
「要するに,自殺未遂による傷病は,原則として給付対象となると考えてよいでしょう。」
と述べられています。
したがって、
「自分で自分を傷つけたから健康保険は使えない」
と単純に判断するのは適切ではありません。
特に、自殺未遂、自傷行為、リストカット、薬物の過量服用などが、うつ病、適応障害、ストレス反応などの精神疾患や精神状態を背景として起きた場合には、健康保険の給付対象となり得ます。日本医事新報の記事でも、ストレス反応や適応障害を背景とした自殺未遂は保険給付の対象になると説明されています。
一方で、保険金や何らかの経済的利益を得る目的で、意図的に自分を傷つけたような場合には、「故意に給付事由を生じさせた」と判断され、健康保険の給付が制限される可能性があります。
結局、
「自傷行為だから健康保険は使えない」のではなく、
「なぜその自傷行為が起きたのか」
が重要になります。
自殺未遂による傷病については、精神疾患等が背景にある場合を含め、原則として健康保険の給付対象となると考えてよいでしょう。一方、利得目的など、明らかに給付を受けることを目的として故意に傷病を生じさせた場合には、保険給付が制限される可能性があります。

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